入試英文を添削するE |
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2020年2月10日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 普段一般的な英語の文章を多読している塾長からすると、大学入試の英語文に触れてギョッとなることがそこそこあります。入試英文も一つの英語の文章として、公平な観点から見てみようとのコラムの第6回目です。 以下、過去問とはなりますが具体例を挙げながら入試英文を<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。 以下参考辞書サイト:https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/ |
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Manual labor was highly valued. Later it was the man who worked with his head to achieve success in business and industry who was looked up to. Now there is in America a curious combination of pride in having risen to a position where it is no longer necessary to depend upon manual labor for a living and genuine delight in what one is able to accomplish with his hand.(大阪府立大)「単純労働は非常に価値があった。のちに、実業や産業で成功せんと頭を使って働くものこそが尊敬された。今や米国では、生きていく為に最早単純労働に頼る必要が無い地位に昇り得たプライドと、自分の手を汚して成し遂げられることの純粋な喜びとの奇妙な組み合わせが見られる。」だらだらと切りどころの無い長い記述が続く悪文です。息継ぎが出来ずに健康面でも良くありません! who が二度繰り返し現れ、塾長はギョッとするのを通り越して笑ってしまいました。look up to (= respect) なる句動詞 phrasal verb が登場しますが、formal な文章では句動詞は控えますので、カシコまらずに気軽に書かれた文章であることが分かります。その割には言う事が鹿爪なのですがどうなっているのでしょうか?最後の文章ですが、1個の文章にあれこれ押し込んで述べるとの良くない書き方の典型を示しており、奇怪さを覚える程です。出題者の質が高く無い様にも感じてしまいます・・・。内容の対照的な語句(対句)に着目するとカッコ付けがまだラクかもしれません。これは現在過去未来の時間の推移と肉体労働 vs. 頭脳労働の対比に注意を払えば容易でしょう。cf. manual from Latin manus 手の、手に関する。 manual l abor を手仕事と訳すと、頭を使う仕事とは対照性が明確に出ません。頭脳労働に対し、頭を使わない仕事、単純労働、肉体労働と訳して下さい。cf. manualhttps://www.etymonline.com/word/manual"of or pertaining to the hand; done, made, or used by hand;" c. 1400, from Latin manualis "of or belonging to the hand; that can be thrown by hand, " from manus "hand,手に関する、手を使って作られたの意味。ラテン語のmanus 即ち hand 手から。カッコを付ける(カッコ付ける?)とManual labor was highly valued. Later it was (the man who worked with his head to achieve success in buisiness and industry) who was looked up to. Now there is in America a curious combination of (pride in having risen to a position where it is no longer necessary to depend upon manual labor for a living) and (genuine delight in what one is able to accomplish with his hand).a combination of A and B の用法を見抜きます。curious 珍しい、奇妙な、珍妙な、と形容されていますので、珍妙な組み合わせ、即ち A と B は対立的な内容だろうと察しを付けながら身構えて読解すると良いでしょう。AとBとが対立的概念ですので、単に「AとBとの珍妙な組み合わせ」とするより、「Aである一方Bであるとの珍妙な組み合わせ」と和訳するとピッタリ来ると思います。 |
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Later 以下は強調構文風ですが、元の文章を考えてみましょう。The man who worked with his head to achieve success in business and industry was looked up to.頭を使って事業や産業で成功を収めんと働く者が尊敬された。頭でっかちの文章ですので、強調構文と言うよりはそのまま倒置させたとも考えられます。倒置した場合 who who となると奇妙ですので、後ろの who を thatにした方が混乱が起きません。Later it was the man working with his head to achieve success in business and industry that was looked up to.或いは受け身形は止め、Later people came to respect such a man working with his head for success in business or industry.「のちに、人々は実業や産業での成功を頭脳を使って求める様な者を尊敬する様になった。」と書き換え、これを強調構文すなわち、Later it was such a man working with his head for success in business or industry whom (= that) people came to respect.「のちに、人々が尊敬する様になったのは、実業や産業での成功を、頭脳を使って求める様な者である。」としても良いでしょう。cf. come to do 〜するようになる |
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これまで6題の入試英文をじっくり見ていきましたが、採り上げた出題例は塾長の目からしてどうなのかと感じるものばかりであり、一般的な入試英文がこれらの様に常に奇矯な様相を示している訳でもありません。 繰り返しますが<簡潔平易で高度な概念を述べる>ことが意思伝達の道具としての語学に一番大切なことであり、文章構造が簡単に理解出来なかったりするようでは、何をか況(いわ)んや、です。1つの文章に多くのことを詰め込まずに適宜細かく分けて述べるなども必要なことです。世の中が忙しくなり合理精神が進んで居ますので、勿体を付けた修辞だらけの英文だと、歌舞伎役者が街に出て来たようになります。皆さんも<簡潔平易で高度>な内容であるか、を英文の価値を見抜く規準の1つにして戴ければと思います。 |
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