入試和文英訳@ 2020東京大学 |
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2020年4月20日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 理由を表す英語表現を2回まで掲載しましたが、連休にも入りますので−と言いますかコロナ禍で休校のままのところが多いと思いますが−急遽今春の大学入試和文英訳問題のコラムを割り込ませ5回シリーズで扱う事にします。解き方のコツをじっくり研究して戴こうとの考えからです。英語表現の残り3回分はそのあとで掲載しますね。 さて、3ヶ月ほど前に大学入試の英文の<添削>を6回シリーズで掲載しました。今度は逆に和文英訳の問題を<解読>してみようと思います。基本的なアプローチとしては、英文和訳の過程と正逆で、日本語の表現を論理的に考え直し、高校卒業程度の英語のフレーズを利用して易しく置き換える、との操作になります。即ち、これは実は日本語の出題文の方を添削する作業にほかなりません。出題側も、高校卒業程度の語彙レベルでの解答以上のもの、例えば文章の風格など、は期待していませんので、自分の知り得る平易な単語、フレーズ、構文を引っ張り出して同じ意味を持つ英文を作成し、兎に角解答欄を埋めることが大切であり、それでそこそこの点数は取れる筈です。入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。 以下参考辞書サイト:https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/ |
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自信ばかりで押し切っては、やがていつかは他人を害する立場に立つ。自分たちは、いつも自分たちの信念がある程度までまゆつばものだということを悟り、かくて初めて寛容の態度を養うことができる。(東大2020年前期、抜粋)【和訳の基本戦略】*<押し切る、立場に立つ、まゆつば、態度を養う>、などの語句は日本語に勿体を付ける修辞ですので、勿論直訳すれば奇妙な英語になります。易しい、自分が知っている表現に置換出来ないかさっと頭を捻ります。しかしごてごてした文章であり、日本語としては悪文ですね。そのアクに翻弄されずにクールに文意を取ることが肝要です。まぁ、それが問われている訳ですが。*入試英文のコラムで、大した内容でもないことをゴテゴテした英文で表現し、下らぬ中身を勿体を付けて飾り立てて述べるのでは無く、平易な表現で高度な内容を述べるのが大切だ、と強調しましたが、これは日本語の文章にも当然当て嵌まります。*つまり和文の衣服をはぎ取り、コアを抽出し、それを英文に直し、次いで英語表現の衣服を纏わせ整える、との戦略で進めます。【和文の大意】*<立場に立つ>とは、他人を害する側に立つ、他人を害する人間になる、ですから、単に、他人に害を為す、で良いと思います。*ばかり、いつも、或る程度まで、眉唾だ、との奇天烈な言葉の並び具合ですが、脳みそが攪乱されぬよう注意して下さい。ばかり、いつも、或る程度まで、は他の言葉に意味を含めてしまい、そのものは略してしまっても良いでしょう。*この和文に奇妙さを覚えるのは、<ばかり、いつも>などとの悉無 (しつむ all or nothing) 的表現の言葉−感情を強める表現−を多用した暑苦しい文章の中に、一点、<ある程度>なる理性的な階調表現を交えていることです。まぁ、漢語的な堅い表現を使用していることも含め、一定の地頭はあるものの、感情失禁傾向のある、文章書きとしての教養の低い者が書いた、との出題設定でしょうか。この様な、いつも、ばかり、などの言葉は非論理的要素として無視して宜しいでしょう。また余談ですが、日常会話の中で、いつも、絶対、必ず、全て、などの言葉を多用する者が居れば、それは脳神経回路の配線が未熟か或いは老化で硬直化した<危ない>思考の持ち主ですので害を受けない内に離れた方が無難かと塾長は考えます。知性とは本来 gradation 階調を伴うものです。研究者とはその様な頭脳を持ちながら、黒か白かをギリギリまで煮詰めて論文化する者を言います。*まず、言葉に捕らわれ過ぎずに、この文章で何を主張したいのか、書き手の意図を考えて平易な日本語の候補を思い浮かべてみます。「押せ押せで生きてるとそのうち他人様の迷惑とならぁ。自信なんてものは幻さ。自分の弱さを認めて初めて他人様に優しくなれるってもんさ。」或いは、<自分の考えが正しいと信じ込む事は、他人の別の考え方を無視しその存在を認めないことだ。><自分が完璧では無いと自覚すれば他人の見解も受け入れる事が出来、友達も出来るだろう。>この様な大意でしょう。第1の文内容を第2の文で逆の視点から展開、説明します。【英語化し易い和文への変換】*英語風な表現に変換すると「自信過剰の態度はやがては他人に害を為すことにつながる。君が自己の信念が幾らか疑わしいものだと認識した時、君は初めて他人を理解出来る様になる」「自己肯定のみで生きて行くことは、遅かれ早かれ、他者を害することになる。この、自分が正しいとの信念が不確かであると知った時に、初めて他人を許す様になれる。」*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。流れとしては、和文の修辞をはぎ取り論理的且つ平易な文章に→自分の知っている平易な英語にひとまず英訳→和文原文のもつ意味合いに修整(時間的余裕があれば)となります。 |
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