英文長文読解 短期集中 個別指導 

KVC Tokyo英語塾

                               

































































































































































































































































































































































































































































































塾長のコラム 2020年5月5日  入試和文英訳A 2020京都大学







入試和文英訳A 2020京都大学




2020年5月5日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 和文英訳の問題を<解読>してみようとのコラムの2回目です。

 基本的なアプローチとしては、日本語の表現を論理的に考え直し、高校卒業程度の英語のフレーズを利用して易しく置き換える、との操作になります。即ち、実は日本語の出題文の方を添削する作業になります。出題側も、高校卒業程度の語彙レベルでの解答以上のもの、例えば文章の風格など、は期待していませんので、自分の知り得る平易な単語、フレーズ、構文を引っ張り出して兎に角解答を埋めることが大切であり、それでそこそこの点数は取れる筈です。入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。


以下コラム作成の参考サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/


https://ja.wikipedia.org/wiki/三幕構成

ここの記述が充実していて大変参考になります。


http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/tohohu4.htm

魯迅 『藤野先生』








京都大学百周年時計台記念館(時計台)

http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/issue/mm/jitsuha/2012/images/130222/01.jpg

http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/issue/mm/jitsuha/2012/130222.htm


塾長も何回か学会で出かけましたが、時計台1Fの売店で金メッキの栞を買っちゃい

ました。現総長の山極氏とはだいぶ以前に霊長類学会のあとで一緒にタクシーに

乗ったことも有りますが相手は覚えていないでしょう。






お金のなかった学生時代にはやっとの思いで手に入れたレコードを擦り切れるまで聴いたものだ。歌のタイトルや歌詞も全部覚えていた。それが今ではネットで買ったきり一度も聴いていないCDやダウンロード作品が山積みになっている。持っているのに気付かず同じ作品をまた買ってしまうことさえある。モノがないからこそ大切にするというのはまさにその通りだと痛感せずにはいられない。

(京大2020年前期、抜粋)




【和訳の基本戦略】


*前回の東大の問題とはだいぶ趣が異なり、日本語に勿体を付ける修辞語句も見られず平易な日常的表現の文章です。自分が知っている、使いこなせる英文表現を利用して大きな語法・文法的間違いの無い和訳に仕上げれば得点出来ると想いますが、英語の基本的表現をしっかりと身に付けているかどうか(実はこれこそ本当の英語力でしょうね)を問われる伸びやかで質の良い設問であると塾長は感じます。


*和文の衣服をはぎ取り、コアを抽出し、それを英文に直し、次いで英語表現の衣服を纏わせ整える、との戦略で進めようにも、最初から裸のむき身の様な天真爛漫な?英文ですね。





【和文の大意】


*キモとなる最後の文章、つまり「モノが手に入らない時代には1つのモノを大切に利用し尽くしたが、モノが容易に手に入る時代ではモノを大切に扱わなくなった」ことをレコード vs.CD or  download music の対比で語ります。まぁ、そこらのオヤヂ (註:塾長含む) がしばしば口にする様な他愛も無い話ですね。魯迅先生を味方に加えれば、大概是物以希為貴罷(おそらく物は稀なるを以って貴しとなす、ということだ)、ですね。


*良くある英文読解の出題文と同様、過去 vs. 現在などの対立概念を、ははぁ〜ん、また出て来たぜ、と鋭く嗅ぎ分けてください。@過去は斯く斯く然々であった、Aしかるに現在は斯く斯く然々だ、B斯くして〜との結論だ、の構成です。芸道の序破急或いは演劇脚本の三幕構成設定  Set-up、対立  Confrontation、解決  Resolution,  SCR)の展開から成ると見抜いてください。


*最初の4文を粛々と素直に和訳し、最後の文章を間違えのないように和訳出来れば高得点は取れそうです。他の設問との時間配分を考えて、さっと手を動かして英文を書き始めてしまう姿勢が大切ではと思います。




【英語化し易い和文への変換】


*<擦り切れるまで聴いた>などの日本語に捕らわれず、<何度も何度も聴いた>の様な同じ意味を持つ易しい表現に置き換えます。


*英語風な表現に変換すると


「貧しかった学生時代にはレコードを何とか買い求めそれらを何度も何度も聴いたものだ。それでレコードの歌のタイトルや歌詞も全部覚えていた。これに対し今では、ネットで買ったが一度も聴いていない CDやダウンロード音楽を沢山持っている。一度買ったことを忘れて同じ音楽をまた買ってしまったことは稀では無い。手になかなか入らないゆえにモノは価値があるのだと強く感じざるを得ない。」


<大切にする>が曖昧表現で、本当にレコードが大切なら時々しか聴かずにおき、キズを付けたりしない様に慎重に扱うのが<大切にする>詰まりは<物理的に丁寧に扱う>ことと思いますが、磨り減るまで聴いていたとのことで、<取り扱いを大切にする>とは意味が違って来ます。聴くべきレコードが無かったのでそれを対象にエネルギーと時間を強く投射した訳で、愛聴した (loved  listening tothe record)、詰まりは中身の情報に価値が有った、価値を認めていた、との意味でしょう。デジタル時代には情報は磨り減らず(但し誤動作などで一瞬で消え去り得ますが)隔世の感が有ります。まぁ、大切だ=価値がある、です。




【英文化の要点】


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


@和文の修辞をはぎ取り論理的且つ平易な文章に直す


A自分の知っている平易な英語にさっとひとまず英訳(これでそこそこの配点は得られる)


B和文原文のもつ意味合いに修整、推敲(時間的余裕があれば)


 となります。








Yesterday  Once  More (イエスタデイ・ワンス・モア) / CARPENTERS

sagittarius1954W

https://youtu.be/-sltNGgjU_4


塾長が最初に買ったシングル盤がこの曲でした。セカンドフレーズの Looking  back  on ・・・

を聴くと胸が締め付けられる思いがします。カレンが若くして亡くなったのが残念でなりません。

易しい歌詞ですので全部覚えたらいかがでしょうか。この入試和訳文の最初の2文が

この曲とオーバーラップする様に感じます。






【塾長の解答1】


In my poor school days, I would manage to buy  records  and  listen to them many times. Thus I memorized all the titles and words of the music  they  had.  For now, I have a lot of  CDs and  downloaded  music  which I once bought through the internet web stores and have never tried. It's  not  rare I get the same piece of music again,  forgetting  having  bought it before. I can't help feeling that things become valuable because wecan   hardly get them.


「貧しかった学生時代には、何とかレコードを買い求め繰り返し聴いたものだった。それでレコードの曲のタイトルや歌詞は全て覚えていた。今や、一度ウェブショップで買ったはいいが一度も聴いていないCDやダウンロード音楽を沢山持っている。前に買ったことを忘れてしまい同じ曲を購入してしまったことは稀では無い。モノとはなかなか手にいれられないゆえに価値が出ることを感じざるを得ない。」


*お気づきかと思いますが、使っている動詞の殆どは、have, get,  listen, buy, feel などの中学レベルで学習する易しい動詞です。


*poor school days は貧しい学生時代だったのか可哀想な学生時代だったのか曖昧な表現ですが、文の後半でなかなかレコードが買えなかったと出てきますので、貧乏だったと理解して貰えるでしょう。


* all the titles and lyrics ですが each tltle and lyrics でもよいでしょう。 lyrics は1つの曲の歌詞全体を差しますが、この意味では単複同形です。


*thus は formal で硬い言葉ですので、so の方が気軽な表現になりますね。thus の後ろにカンマを付けるべきかは揺れ動きが出るでしょう。


次に動詞を幾つか明確性の高い概念を持つものに換えて書き直すと




【塾長の解答2】


In my poor school days, I would manage to buy  records  and  listen  to them repeatedly. So, I memorized each title and lyrics of the music they    contained. In contrast, I now hold a lot of CDs  and  downloaded  music that I once purchased through the web stores but have never tried. It's  not   rare I get the same piece of music again, f orgetting  having  bought it before. I can't help keenly realizing that things become valuable  because we   can hardly obtain them.


「貧しかった学生時代には、何とかレコードを買い求め繰り返し聴いたものだった。それでレコードの曲のタイトルや歌詞はそれぞれ覚えていた。逆に、一度ウェブショップで買ったはいいが一度も聴いていないCDやダウンロード音楽を今や沢山持っている。前に買ったことを忘れてしまい同じ曲を購入してしまうことは稀では無い。モノとはなかなか手にいれられないゆえに価値が出ることを鋭く認識せざるを得ない。」


 When I was a student, I didn't have  enough  money.  So  I bought  records with difficulty  and  would listen to them over and over again ....と素直に表現しても勿論良いと思います。

 ここでの enought とは有り余るほど十分な、の意味はなく、丁度良く十分な、の意味です。not enough  money で水準より下の経済状態にあった、となります。




【塾長の解答3】


 When I was a college student, it was  economically  not  easy  for me to buy music records. I would listen to them repeatedly until they got  worn  out, and thus I memorized each title and  lyrics  of  the music they contained. In contrast, I now hold a lot of CDs and downloaded music  that I  once  purchased through the web stores  but  have  never tried. It's not even rare I get the same piece of music again, forgetting having  bought it  before. I know things are valuable  because  of  their  low availability.


「学生の時はレコードを買うのが経済的に容易ではなかった。レコードが擦りきれるまで繰り返し聴いたものだしそれで中身の曲のタイトルと歌詞はどれも覚えていた。現在は対照的に、ウェブショップで求めた沢山のCDやダウンロードした曲があるが、一度も聴いていないものも多い。以前買い求めた経験があることを忘れてしまい同じ曲を再び買うことすら稀ではない。こんな訳で、低入手可能性ゆえにモノには価値があるのだ、と本当に知った。」


it was economically not easy for me to buy music  records

これを

it was not easy for me to afford music records としても良いでしょう。

*afford = have enought money to buy であり、また economically は buy に対する冗語でもあるからです。









解説


cf. would do 〜良くしたものだ 〜したものだった(過去の習慣を表す)

= was (were) accustomed to  do 〜する習慣があった

= used to  

・Formerly and habitually or repeatedly, but  possibly  no  longer,did.

以前に習慣的に或いは繰り返し行ったが、もはや遣っていない(可能性のある) 以前には良くやった


cf. be used to do,  be used to sth  〜に慣れている 習慣だ


I'm not used to cold weather.  僕は寒い天気には慣れていない。

They weren't used to getting up so early. 彼らはそんなに早く起きる習慣ではなかった。



cf.manage to do

 (困難がある中を)何とか〜する、なんとかやり遂げる  (苦労しながらも実際にやり遂げる)


 I managed to catch the last train. なんとか終電に乗れました。

= I was able to catch the last train  although  with  difficulty. 困難を伴ったが終電に乗る事ができた。


cf. be worn out

擦り切れてボロになる


cf. in contrast これとは対照的に、鋭い対照性を表す表現ですが、科学論文ではよく利用されます。by contrast も同じ意味ですが in contrast の方が一般的です。


*on the contrary は前言に対する対照性をより強めた表現として使われ、<それどころか、全く逆に>と訳すとピッタリ来ます。前言(否定文であるのが普通です)に対して強く反論する(前言は事実では無い、本当は逆だ、と主張する)場合に多用されますが、勿論自分が述べた前言に対して用いることも出来ます。ここでは前言は過去の真実ですのでそれに反論して現在は〜だとの表現ではありません。と言う次第で、単純に対比として in contrast が良いでしょう。



cf. my CDs  歌手が自分の CDですと差し出す場合も This  is  my  CD. となりますが、ここでは当然ながら私が所有するCD の意味です。


cf.not even rare = often  稀ですらない=〜すら稀では無い=しばしばある

rare は uncommon に置換可能です。


cf. forgetting having bought it before

以前既に買ってあった(以前に買った経験が有る)ことを忘れてしまって(理由を示す分詞構文)

= forgetting I have bought it before

= because (as) I forgot  having bought it before

  

forget doing 〜したことを忘れる (既遂)

forget to do 〜しようとするのを忘れる(未遂)


cf. can't help doing

= to not be able to control or  stop something:

 自然に起こる動作や言及、湧いてくる感情を自分では制御したり止めることが出来ない

 〜を禁じ得ない

= cannot controll  (stop)  sth  (doing)

"Stop laughing!" "I can’t help it!"

 笑わないでよ! 止まらないのよ!


*help = stop, controll と考えます。


cf. 過去からの一連のことが、最後の文章詰まりは結論に至った理由になっていることを主張したいのであれば、for those reasons  これらの理由から、こんな訳で 或いは That's why そんな訳で、を冠すると、文章にメリハリが出ます。三幕構成を明確にする作戦です。しかし文章がくどい感じにもなるのでカットしても良いでしょう。


*痛感する、は、強く感じる feel strongly、 深く理解する understand  deeply 、本当に分かっている(=本当に分かった、日本語では過去型表現になります)  really know、本当にそう思う think  really など、自分が知っている表現に置き換えればOKです。まぁ、心中に思い浮かぶことですので、困ったら最後は何でも  think を採用すればそれでパスするでしょう。易しい動詞+易しい副詞のセットに持って行く作戦です。<まさにその通り>=<本当に>、ですが、痛感する、の冗語ですので無視します。


cf. become valuable :  be valuable 価値がある、の動作型 価値が出る、価値を持つようになる、動作の動詞 get に合わせましたが、解答3の場合は be  valuable でもOKです。<得ようとしてもなかなか手に入らないゆえに価値が出る> vs. <モノが入手困難性ゆえに価値がある>、です。


*解答1,2の because  を if や when に変えても通じますが、アピールは弱くなります。


cf. hardly

 困難だ with pain or with difficulty の意味の他に、

 殆ど〜無い、殆ど見込みの無い、辛うじて〜の、日本語での否定の意味を含む語として多用されます。

=almost not; barely, not at all, scarcely, with little  likelihood 


 can hardly do で殆ど〜出来ない、なかなか〜出来ない、辛うじて出来る、の意

  (僅かには出来ている)となります。

 I've got lots  of  barely legal photos.  オレはギリギリ合法の写真わんさか持ってんだ。

 have got = have (口語)


cf. availability 手に入り易さ、入手可能性

 available 手許にあって利用出来る、すぐ手に入る

= suitable or ready for use; of use or service  at  hand

= readily obtainable; accessible




皆さんなりの英文を作成してみて下さい。1つの問題をじっくり研究し

繰り返し何度も演習を積めばコツが掴めて来る筈です。


グライダーの操縦と同じで離陸して自分で飛べるようになる

までは教官に手取り足取り指導して貰うと良いでしょう。


英文読解と英作文は表裏一体で、語彙、構文など含め

英語の実力、総合力が如実に問われる分野だと

改めて認識出来るのではないでしょうか?