英文長文読解 短期集中 個別指導 

比較を表す表現3クジラ構文>と<イルカ構文> A is no more/less B than C is D  @    

KVC Tokyo  やり直し硬派英語塾

                               





















https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/























































































































































塾長のコラム 2024年10月1日






比較を表す表現3



2024年10月1日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 前回シリーズまで、似ている、近い、異なる、唯一だ、の表現、について扱って来ましたが、その根本に存在する精神作用は2つの事象、事物を比較することにあります。そこで、同じだ、異なる、のシリーズの次として、個々の語句の意味用法即ち語法ではなく、構文(=文の構造)としての比較表現について、極く単純なものは除き、慣用的に用いられるものも含め、一通り触れて行きましょう。

 基本は文章言葉ですし、また、もともと簡潔明快な、non-native 含め誰もが誤解無く、意味を掌握出来る表現を理想とする学術論文、特に自然科学系の論文に於いては、簡易な表現は別として、<込み入った比較構文>が登場する事はまずは無いのですが、塾長の経験からは、社会科学系や人文科学系の教授の講演記録集などでは、その様な表現が口述の修辞としてそこそこ使われるのを見ています。まぁ、話し手側の教養をさりげなく示す武器となります。また、日本の大学入試などにも決まり切った様に出題される表現も含まれますので、その観点からも知っておいて損はないだろうと思います。このシリーズは過去のコラムの各所にて断片的に述べて来たことの纏めとしての位置づけでもあります。

 最初に、我々日本人には特に意味の取りにくい、否定の比較構文について、ガッツリ進めて行きましょう。このシリーズの第3回目となります。更にこの先の予定としては、各種英語構文の内、やや難解なもの−同格構文、挿入構文、共通構文、強調構文、倒置構文、省略構文、否定構文(比較構文以外のもの)−を中心に順次触れて行く積もりです。まぁ、語法の解説が長く続きましたので今度は切り替えて再び文法だ、と言う次第です。

英国ケンブリッジ英語辞典並びに Collins 英語辞典の用例を主に参考に解説を加えて行きます。

https://www.collinsdictionary.com/jp/dictionary/english/not-so-much

https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/no-more-than

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/no-soonerthan



『チャート式 英文解釈』 鈴木進、数研出版、昭和51年、第8章 比較構文


https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/en/recordID/handle/2297/43377?hit=-1&caller=xc-search

 No more A than B 構文の認知言語学的・語用論的分析、廣田, 篤

人間社会環境研究 Human and socio-environmental  studies,  vol.30: 23-29, 2015 (紀要論文)

ISSN: 1881-5545

http://hdl.handle.net/2297/43377

Abstract:

   In this paper, we will investigate in detail the  nature  of  the  No more A than B construction. First, we will see this construction classified  into  several categories based on the formal differences  among  them,  and then, those corresponding semantic differences will be explored. In  particular, we will focus consistently on than -phrases  of  No more  A  than  B construction, which will turn out to be characterized through the  actual usage of several sentences as … Read more


https://core.ac.uk/download/pdf/236558884.pdf

英語辞書の問題点−特に比較構文について−坂井孝彦

176-178ページにno more A than B の解説有り。


https://ja.wikipedia.org/wiki/コーパス






【くじら構文】英文法の鬼が no more A than B の正しい訳し方を解説【no less than】

時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch   2021/10/05

https://youtu.be/SgfEq4TqciQ


認知言語学の視点から難解なクジラ構文について1つの明快な解説を加えてくれて

います。youtube 上のクジラ構文解説動画は大方視聴しましたが、この時吉氏のものが

一番優れているものの1つと感じました。塾長自身の毎度の解説法も実は認知言語学、

語用論に近い観点からのものゆえ、氏の解説動画には一脈通じるものを感じますね。





否定の比較構文3  クジラ構文とイルカ構文1




<クジラ構文>とは


A is no more B than C is D.

A is not B any more than C is D


= A is B to no greater extent/ in no greater  degree  than C is D.

 CがDである程度、或いはその度合い以上にAがBであることはない

 AがBである事はCがDである程度を何ら越えない。

 AがBである事はCがDである程度を何ら上回るものではない。


  と、字面通りには、まずは解釈出来ます。


*ここにC is D が明らかに間違いであることを表記すれば

 CがDであるとの誤り、間違いの事実のレベルを何ら超えること無く、AはBではない

 との文意になり、

 (これを<意訳>して)

 → CがDであることが誤りである(あり得ない)ことが明らかなのと同様に(それ以下で)AはBではないのだ

 → CがDでないのが当たり前なのだからましてやAがBである筈が無い

 と解釈します。


即ち

≒ A is not B just as C is not D.

≒ A must not be B just because C is not  D.

 に書き換え可能です。


*いわゆる<クジラ構文>とは、CイコールDであることがあり得ない、誤りである、内容の文言を than 以下に明確に述べる文のことです。

*然るに、CイコールDであることが誰が考えてもあり得ない、誤りである、の文言が than 以下に述べられて居らず、第三者的に誤りかどうか判別不明の文言が続く時は、字義的にはこの解釈にはならず只の比較構文としても解釈可能になります。この場合、文意は曖昧性を持つ訳です。


例えば、

He doesn't speak English any more than I do.

= He speaks English no more than I do.

 彼は私が英語を話すレベルを何ら超えること無く英語を話す。が字義通りの意味ですが、<数学的>には、私の英語能力が高い、場合も想定し得ます。

 ここに仮にもし私の英語スピーキング能力が低い、劣っていることが、この文の読み手、周囲の聴き手に明確であるとすれば、

He speaks English as little as I do.

 彼は私と同じくらい英語を話さない。(2人とも話す能力が低い)

 と解釈は可能になります。


*しかし実際には、A no more than B を使う時点で−比較級の否定表現は not as...as の表現を含めて、本質的に共に貶める精神作用がある−A、B双方の劣位性或いは否定性を語る修辞的或いは感情的表現ですので、この構文に於いては、上に述べた様に、<私が英語を話すレベルが高い>との可能性もあるとの数学公式的な解釈は最初から出てこないと考えるべきでしょう。


*Collins  dictionary や Cambridge  dictionary にはフレーズとしてのこの語句用法の記述が掲載されていません。

*non-English speaker 向けの Longman  dictionary には説明が載っていましたが簡単な例文が1つだけ掲載されています。

*OED 2nd edition の no more の項に数例文だけが載っていました。しかし意味内容に関する詳細な説明は一切ありません。


*日本の入試英語<業界>では、この構文をクジラ構文>などと捉えて盛んに騒ぎ立てしますが、意味用法に関する十分な説明が不足するケース−なぜthan の後ろを否定的に訳す<ことにする>必要性があるのかの肝心の説明が無い−が多く、その場では分かったような気がしても数日経てば再び解釈に混乱するとの繰り返しになります。



<イルカ構文>とは


*上の例文He doesn't speak English any more than I do.の叙述形式は後ろに誰が見ても間違いであることを記述する<クジラ構文>なる構文形式では無く、発話者本人若しくは周囲の者が誤りであることを認識するに留まることを示す用法になります。それゆえ、ガチガチの<クジラ構文>ではなく、それのsmall 弱体 casual 版の<イルカ構文>とでも呼称すべきものでしょう。


*<クジラ構文>と<イルカ構文>共に、C=Dである事が間違いである、その程度を全く越えずにA=B である、と考える点は同じです。

*要は、いずれも<共倒れ構文>です。

than 以下に not を添えて否定に訳すのがコツですね。

*(any) more than 以下を just as...not を用いて書き換えるだけです。






Whale Vs. Dolphin

Jaimen Hudson  2017/06/27

https://youtu.be/TCVpPsanHUo


クジラ対イルカですが、鯉とクチボソ(標準和名モツゴの東京での呼び名)

ぐらいのサイズ差がありビックリしますね。





<クジラ構文>と<イルカ構文>の違い


*真性の<クジラ構文>では比較表現としての意味合いは薄くなり、AとBの関係性を述べるためにCとDの関係性を比喩として述べる文ですので、文ABと文CDとの間に必ずしも直接的な関係は不要です。


*一方、<イルカ構文>は会話中に利用されますが、〜でないのと同様〜でない、の係争時に使われる例が多いですね。

*しかも、文ABと文CDとの間に大方直接的な関係がある記述になります。


*まぁ、相手を言い負かしたい悔しがりの表現、相手を自分のダメなレベルにまで引きずり下ろしたい通俗表現になります。

*余談ですが、この様な妬み、嫉みの物言い−否定感情での物事の比較−をするレベルの相手とは付き合わない方が良さそうですね。

*低い方に脚が引っ張られてしまいますので同じ土俵には上がらずクールに無視するのが最善です。


*クジラ構文の世俗版、casual 版が<イルカ構文>であるとの塾長の見解です。

*一方、<クジラ構文>は、硬い文中や formal なシーンでたまに見かける程度の表現になります。



*前々回のコラムにて

no more than

 (強調表現)

  〜以上のものでは全然無い、〜を何ら超えるものではない、〜しかない、僅か〜だ、只の〜に過ぎない

= as little as, only, just たったの、〜だけ

 と解説しましたが、基本的な意味合いはこれに同じであり、than の前後の事象が程度に大差無い、しばしば前者が後者より更に劣っていることを示す表現です。


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youtube 動画を通じての語学学習の限界


*youtube 動画で数多くの塾講師らがこの<構文>の解説を開陳していますが、勿論優れた例外はありますが大半はキレの無いもどかしい説明レベルに留まります。

*塾長の様に<クジラ構文>とそのcasual 版<イルカ構文>の違いについて明瞭に解説したものは1つも有りません。このコラムが初出でしょう。

*不思議な事に、native 側が<クジラ構文>について解説する動画は一本も確認出来ませんでした。数例の韓国人からのものを除き全て日本人からの動画になります。

*これは即ち、日本語遣いの日本人の脳には入りにくい英語固有の発想が含まれる表現であることを物語るものでしょう。

*そしてそれを解説し得ているかで一流の講師であるかの判別が出来ます。


*と言いますか、一般論になりますが、youtube 動画などでそもそも文法の詳細を語るには時間尺的にも無理があります。

*どうしても基本即ちサワリの断片的解説に留まってしまい、<神髄>を語ることは厳しいでしょう。

*従って海外の動画も含め、non-native 英語初心者或いは英語圏本国の小中学生相手の半端な解説動画レベルに留まってしまいがちになります。

*これが youtube 含め各種SNS等(但し相手との直接対話形式のものは除きます)利用の語学学習の最大の欠陥、限界でしょう。

*本当の本当に知りたいことは youtube などには幾ら探しても載っていないと言う事になりますね。


*SNSにてサワリを紹介し、自著や自家コラムに引き込んで詳述するのが正しい利用法でしょう。一種のコマーシャル動画の立ち位置ですね。

*このことを弁えて有効活用すればよいでしょう。

*たとい native 教師のものであれ、低レベルの語学解説は youtube 上にごまんと有りますので、疑問が解決出来ないのであれば国内外の専門的な文法書、Oxford English Dictionary、或いは学術論文などにまで踏む込むのが最善です。

*尤も、それでも解決出来ないケースは少なからずあります。そうなると過去の用例集(corpus コーパスと言う)を元に自分で<研究>するしかないですね。


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さて、

*昔の参考書を紐解くと、例えば 『チャート式英文解釈』  鈴木進著、数研出版、第9刷、昭和51年、では、than 以下に「不可能、または考えられない」との前提条件がある、と記述されています。


*『No more A than B 構文の認知言語学的・語用論的分析』、廣田 篤 (2015) の紀要論文に拠れば、than 以下に、「くある極端な性質を帯びた対象(モノ・プロセス)>としてスキーマ的に規定できるが、そのような規定だけでは説明できないメタファー表現が存在し」とあり、要は、極端或いはあり得ない様な対比をthan 以下で判断の基準として与え、前半部分の不成立具合を強調補佐するとの考えに見えますが、鈴木氏の参考書と基本は同じものと判断可能でしょう。


*than のこのような判断記述を示す用法は、more than  I  expected  私が期待した以上だ(=実はそうなるとは期待して居なかった)、などにも見受けられるところですが、時に、than 以下に述べる事は事実は逆である、の意味を含み得るとの事なのでしょう。than のこの意味用法が native には寧ろ当然ゆえ、英英辞典には特に説明の記述が無いのではないか、と塾長は考えて居ます。

* than  を板に置いて、程度が高い域と程度が低い域とを境界する考えですね。]

*それを否定すると境界の板が無くなり、同じだ、となる訳です。


*これらの認知言語学、並びに語用論的知識を元に次回以降考察を加えて行きます。