英文長文読解 短期集中 個別指導 

比較を表す表現4クジラ構文>と<イルカ構文> A is no more/less B than C is D  A      

KVC Tokyo  やり直し硬派英語塾

                               





















https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/























































































































































塾長のコラム 2024年10月5日






比較を表す表現4



2024年10月5日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 前回シリーズまで、似ている、近い、異なる、唯一だ、の表現、について扱って来ましたが、その根本に存在する精神作用は2つの事象、事物を比較することにあります。そこで、同じだ、異なる、のシリーズの次として、個々の語句の意味用法即ち語法ではなく、構文(=文の構造)としての比較表現について、極く単純なものは除き、慣用的に用いられるものも含め、一通り触れて行きましょう。

 基本は文章言葉ですし、また、もともと簡潔明快な、non-native  含め誰もが誤解無く、意味を掌握出来る表現を理想とする学術論文、特に自然科学系の論文に於いては、簡易な表現は別として、<込み入った比較構文>が登場する事はまずは無いのですが、塾長の経験からは、社会科学系や人文科学系の教授の講演記録集などでは、その様な表現が口述の修辞としてそこそこ使われるのを見ています。まぁ、話し手側の教養をさりげなく示す武器となります。また、日本の大学入試などにも決まり切った様に出題される表現も含まれますので、その観点からも知っておいて損はないだろうと思います。このシリーズは過去のコラムの各所にて断片的に述べて来たことの纏めとしての位置づけでもあります。

 最初に、我々日本人には特に意味の取りにくい、否定の比較構文について、ガッツリ進めて行きましょう。このシリーズの第4回目となります。更にこの先の予定としては、各種英語構文の内、やや難解なもの−同格構文、挿入構文、共通構文、強調構文、倒置構文、省略構文、否定構文(比較構文以外のもの)−を中心に順次触れて行く積もりです。まぁ、語法の解説が長く続きましたので今度は切り替えて再び文法だ、と言う次第です。

英国ケンブリッジ英語辞典並びに Collins 英語辞典の用例を主に参考に解説を加えて行きます。

https://www.collinsdictionary.com/jp/dictionary/english/not-so-much

https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/no-more-than

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/no-soonerthan

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/all-the-more

https://www.collinsdictionary.com/jp/dictionary/english/would-rather


『チャート式 英文解釈』 鈴木進、数研出版、昭和51年、第8章 比較構文

 ここの例文を幾つか参考にしていますが、一部、より現代的な表現となる様、書き換えたものも併記しています。


https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/en/recordID/handle/2297/43377?hit=-1&caller=xc-search

 No more A than B 構文の認知言語学的・語用論的分析、廣田, 篤

人間社会環境研究 Human and socio-environmental  studies,  vol.30: 23-29, 2015 (紀要論文)

ISSN: 1881-5545

http://hdl.handle.net/2297/43377

Abstract:

   In this paper, we will investigate in detail the  nature  of  the  No more A than B construction. First, we will see this construction classified  into  several categories based on the formal differences  among  them,  and then, those corresponding semantic differences will be explored. In  particular, we will focus consistently on than -phrases  of  No more  A  than  B construction, which will turn out to be characterized through the  actual usage of several sentences as … Read more


https://core.ac.uk/download/pdf/236558884.pdf

英語辞書の問題点−特に比較構文について−坂井孝彦






英文解釈講座第7講【クジラ構文の攻略】

ユーテラ授業チャンネル【YouTubeの寺子屋】

 2021/07/31 https://youtu.be/lg854aoO2E0


カリスマ講師のモリテツ氏がクジラ構文の解説をしてくれます。クジラ構文

A is no more/less B than C is D は、than 以下に述べる事に対してそのレベルを

上回る/下回ることは全然ないとの字義に過ぎないません。than 以下に誰が見ても

明らかな間違いを述べれば、ましてやA= B である訳が無いだろ!の表現になるだけ

の話です。口語表現に見られる C is Dが普遍的な誤りであることを示さない表現は、

相手を落とす為の共倒れの浅ましい表現になるケースが殆どでしょう。

まぁ、<クジラ構文>の通俗劣化版の<イルカ構文>です。





否定の比較構文4  クジラ構文とイルカ構文2



(前回からの続き)

A is no more B than C is D.

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OED 2nd edition の記述


no more

= To no greater extent; in no greater degree. (Followed  by  than.)

それ以上の程度では全く無い; これ以上の度合いは全く超えない  (thanが続く)

 との簡潔にして明快な説明書きがあるのみで、no more than の他の用例と一緒くたに以下の2例が載っています。


1633 Bp. Hall Occas. Medit. (1851) 186 Thou..canst  no  more  be  absent than not be thyself.

= You can no more be absent than not be yourself.

= You cannot be absent just as you can be yourself.

= You cannot be absent because you are yourself.


 君が君自身であり得るのと同じく君は存在しないことなど有り得ない。

→君は君自身であるゆえに君は存在しない訳が無い。

   (君が君自身ではないと言う事はあり得ない、それは誤りである)


1850 Thackeray Pendennis xxi, [Laura's eyes] could  no  more  help.. looking and shining than one star can help being brighter than another.

 一つの星が他の星より明るくなるに決まっているのと同様に、[ローラの目は)見開いて輝かざるを得なかった。

   (或る星が他の星より明るくならないことはあり得ない、それは誤りである)


= [Laura's eyes] could not help..looking and shining  just  as  one star can't help being brighter than another.


cf. can't help doing 〜せざるを得ない


このOED の掲載文がスンナリ和訳出来る方は私のコラムなど最早学習不要ですのでさっさと卒業して英語の世界に羽ばたいて下さい!


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『チャート式英文解釈』 鈴木進著、数研出版、第9刷、昭和51年の記述  (p.332)


以下の記述があります:

 "A is no more B than C is D." または "A is not B  any  more  than C is D."(B=Dのこともある)の形の文において、CとDの関係は、CがDであることが不可能、または考えられない(C≠D)という前提条件がある。すなわち、「CがDである」ということがまちがっているとだれでも知っている例を'than' 以下において、「『AがBである』のも同じようにまちがっている」、だから「AはBではない」と主張するための構文である。(下線は塾長が加えました)


*以下は<クジラ構文>そのものの例文の解説ですね。

*以下全て古典的題材から取られた表現になります:


A home without love is no more a home than  a  body  without  a  soul is man.

 魂の無い肉体が人間で無い様に、愛情の無い家庭は家庭では無い。

= A home without love is not a home just  as  a  body  without  a  soul is not man.

  (than 以下に明らかに真実では無い事を述べている)


We cannot create an observing faculty any  more  than  we  can create a memory.

 記憶力を想像出来ない様に観察力は想像出来ない。→記憶力を想像出来たら観察力だって創造できるよ。

= We cannot create an observing faculty just  as  we  cannot  create  a memory.

 (than 以下に明らかに真実では無い事を述べている)


In the Greek sense of the term, a hero is not merely  the  central figure in a play or novel, any more than a saint is mere a very good.man. (一橋大の過去問)

 その言葉のギリシア語の意味に於いては、英雄とは、聖人が単なる善人でないのと同じく、単に芝居や小説中の中心人物であるのではない。

 (than 以下に明らかに真実では無い事を述べている)


*落ち着いて any more than 以下を just as ...not に置換して訳すだけです。

= In the Greek sense of the term, a hero is not  merely  the  central figure in a play or novel, just as a saint is not mere a very good.man.


*上記例文のいずれも、如何にも<オレ様はクジラ構文>だ、の体ですね。


他方、以下の例文も挙げられていますが、こちらは口語の<イルカ構文>ですね。


I can no more fly than you can swim.

 君が泳げるのが間違いである程度以上に僕は跳ぶことが出来ない。

 *you can swim なる事象は少なくとも語り手と相手が事実ではないと承知している、との前提ですね。


→君が泳げないのと同様僕も空を飛べない。(共倒れ)

= I cannot fly just as  you cannot swim.


→お前が泳いだらオレは空を飛んでやるぜ。(挑発表現)







Dignity,  Rights, and Responsibilities - Prof. Jeremy Waldron

Bar-Ilan University - 2017/08/22 https://youtu.be/RHJjWVarJ3M


Dignity, Rights, and  Responsibilities, a lecture by Prof. Jeremy Waldron of BIU,

given during during  "Rethinking Responsibility in a Changing World", an eventof

the Bar-Ilan Faculty of Law  and  the Center for Jewish and Democratic Law, inJune 2017.


この動画内容とは異なりますが、 Waldron 教授の、2009年4月21−23日に、カリフォルニア大学

バークレー校にて行われた講演 "Dignity, Rank, and Rights" の50頁に亘る講演記録中に1箇所

だけ以下の<クジラ構文>が使われていました。

Latin “dignitas” is not  necessarily  English “dignity” any more than Kantian“Wurde” is.

 カント哲学の言う「Wurde」がそうでないのと同様に、ラテン語の 「dignitas」 が英語の「dignity 」

であるとは限らない。

= Latin “dignitas” is  not  necessarily  English “dignity" just as Kantian“Wurde” is not.

<クジラ構文>の使用が稀だと言う訳ですね。


法哲学について平易で明快な英語を話しています。個々の表現が皆理解出来れば留学など

ラクかと思います。文系インテリが通常使う語彙、表現が大方網羅されています。Waldron教授の

他の動画を含め是非ヒアリングの参考にして下さい。皆様の<インテリ指数>が上がる筈です。





A is no more B than C is D.

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weblio 辞典の記述


https://ejje.weblio.jp/content/not+any+more+than

not…any more than…

 …でないのは…でないと同じ、とあり


I don't understand it any more than you do.

 君がわからないのと同様私にも理解できない.

 との例文とその和訳が掲載されています。


この文を言い換えれば、

I understand itto no greater extentthan you  understand.

 君が理解している程度を何ら越えること無く(寧ろずっと低いくらいに)僕は理解している。

 ですので、君の理解が低いなら僕も理解が低い事になりますが、君の理解が高いなら僕の理解もそれより低いがまだ高いと字義的には解釈可能です。


*前回にても触れましたが、実際には、比較の否定は、単に数学的に比較を否定する論理表現では無く、先に述べる事象が than 或いはas 以下に述べる事象よりも程度が更に劣っていることを意味する表現になります。まぁ、ヒネた<共倒れ表現>です。


*そこで、君の理解が低いので僕の理解もそれを全く超えること無く低い、或いは等しく劣っている、二人とも馬鹿である、の意味に取れば、

=  I understand it as little as you understand.

=  I don't understand it, just as you don't.

 などと置き換えられます。


*than 以下の、you  do  (=understand) であることが、一般的に誰が見てもそれが真実では無いと分かって居ることを語る文言ではなく 、単なる文言ですので特に<クジラ構文>扱いして騒ぎ立てることも無い表現です。

*まぁ、<イルカ構文>の類いです。


*と言いますか、繰り返しますが、明確な<クジラ構文>と<認定>されないような表記、口語的意味合いの表記に、そもそも not…any more than…の表現を使って欲しくないと感じます。修辞に懲りたい −non-native には意味が分からない−以外では、平易な言葉で最初から語ればそれで足ります。


例えば、

He is not young any more than I am.

= He is not young, just as  I am not young.

 彼は私同様に若くはない。(どちらも老けているとの共倒れ表現)


= He is no more young than I am. ですが、

これは時に、

→He is no younger than I am.

 彼が僕より年下なんてあり得ない。

= There is no way he is younger than me.

 と解釈する者も居るでしょう。


*実は最初の young は<若い>と言う絶対状態を示すのですが、下の方は、〜より歳下だとの相対表現に意味がすり替わっています。

*これを捉えて、その解釈は間違っていると強調する予備校講師なども存在するのですが、non-native がその様に理解する事実があり、だったら最初から明快な、誤解の無い記述にすべきと言えるでしょう。

*まぁ、native 同士の内向きな口語表現である訳ですね。


*<クジラ構文>として使うのであれば、<CがDでないのが間違いだと世間の誰にでも判り切っているのと同じく、AがBである筈が無い>、と修辞を込めた強調、或いは文学的な強調を意味合いに持つ、重苦しい!文章に本来的に使って欲しいものであり−逆説的になりますが−その方が初心者には分かり易いとも言えましょう。


*その点に於いて、weblio の例文は次回にて採りあげるロングマン現代英英辞典同様に、口語的な文例のみを挙げている自体が不十分な解説と言えそうですね。

*実際のところ、口語では利用例はほぼ目にせず、あるとすれば脚引っ張り合いの表現のみであり、また<クジラ構文>も硬い formal な文章中でもたまに利用される程度ですので、それらを理由に Collins  dictionary や Cambridge  dictionary では不掲載なのかも知れませんね。

*まぁ、半ば死語扱いかも知れません。



*塾長が最近出会った<クジラ構文>は以下の数十頁に及ぶ法哲学講義録中の一箇所に過ぎません:

Dignity, Rank, and Rights, JEREMY WALDRON

The Tanner Lectures on Human Values,  Delivered atUniversity of California, Berkeley April 21-23, 2009


Latin “dignitas” is not necessarily English “dignity”  any  more  than Kantian “Wurde” is.

= Latin “dignitas” is not necessarily English “dignity"  just  as Kantian “Wurde” is not.

 カント哲学の言う「Wurde」がそうでないのと同様に、ラテン語 の「dignitas」 が英語の 「dignity 」であるとは限らない。