否定構文8 |
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2024年12月15日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 前回シリーズの前半にて、否定表現を交えた比較構文について説明を加えました。これは特に我々日本人には直感的に意味が掴めないものとなります。西欧語同士は互いに類似した言い回しがあるため、理解に困難は無い筈ですが、日本語にはその様な発想法が無く、何度説明をされ、一端は分かったものの、暫くするとまた混乱してしまう方が多いのではと思います。今回からは、それの一種の延長戦上にある表現として、否定構文の内でも難解な二重否定構文を採りあげて行きます。まぁ、否定語+than を、than を否定語に変えて、否定語+否定語にしたものと似ています。 殆どが定型的な慣用表現でもあり、また日本語でも、〜無い訳では無い、吝(やぶさか)かでは無い、憎からず思う、などの二重否定表現があり、否定+than の場合よりは、幾らか理解すること自体は容易ではと思います。但し、和訳するに際し好適な訳語を当てるには、文脈を把握することが必要となりますのでなかなか大変です。 その場でまごつかないように、斯かる言い回しには斯かる訳語(の候補)を当てる、と、その定型的な複数候補−要は書き換え公式と呼称しても良いもの−を含めて前もって知っておくことは、比較表現などと同様、非常に大きな強みになります。難解な比較表限と否定表現をきっちり押さえておくと、英語の読解力が確実に数段上に上がる訳です。皆さんには塾長のコラムを通じて是非ともそれらを頭に input して戴ければと思います。 当然乍らストレートに物言いすべきところを、ひねて婉曲に告げる表現ですので、学術論文などには皆無の表現ですね。特に難解な<凝り固まった>表現は古典的な文学作品にも頻出し、一頃の大学入試では、この様な持って回った様な英文を和訳せよとの出題が見られ、受験生泣かせでした。この種の出題は、古典的文芸教材を元に古い教育を受けた文系上がりの英語教官が半ば趣味的に出題したものと私は考えて居ます。これが入試に対応せざるを得ない高校での英語教育を歪め、何年英語を勉強 study しても英語が身に付く learn することが出来ない元凶の一つであったろうと考えます。なんとなれば、難解なハズルの様な英文を<解読>させることと、意思疎通の為の正しく明確な英語表現力−自己主張力−を育てる事とは次元が大きく異なるからです。難解な英文を提示する事で自らの地位の保全を図るようなところが、旧来の英語指導者の多く−優れた指導者は勿論存在しましたが−に見られた様には感じています。幸いな事に斯かる古い世代の遣り方は駆逐され、事態は改善されつつあり、近年の入試にはその様な<パズル問題>はだいぶ少なくなって来ていると感じますね。 これらの表現について過去に断片的に述べたものも纏め一通り触れて行きましょう。このシリーズの第8回目となります。更にこの先の予定としては、各種英語構文の内、やや難解なもの−同格構文、挿入構文、共通構文、強調構文、倒置構文、省略構文、−を中心に順次触れて行く積もりです。 英国ケンブリッジ英語辞典並びに Collins 英語辞典の用例を主に参考に解説を加えて行きます。 https://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/double-negatives-and-usagehttps://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/negation_2https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/in-no-wayhttps://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/sense?q=in+no+sense『チャート式 英文解釈』 鈴木進、数研出版、昭和51年、第7章 否定構文ここの基本的構成並びに(難解な)例文を幾つか参考にしていますが、塾長なりの視点から批判的検討を加え、また一部、より現代的な、或いはより正しい明確な表現となる様、書き換えたものも併記しています。 |
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その他の否定表現3−部分否定1部分否定*部分否定とは、すべて、完全に、丸ごと、いつも、必ず、などの包括的な意味合いを持つ語 ( words with comprehensive connotations) に not を添えて表現する形式です。*ここでの not は数学記号の様に単に後ろの記述を否定するだけですので、<完全だ>→<完全だ、という訳では無い>、の意味合いになります。*感情に基づく強意表現ではなく単なる論理的な記述法ですので、学術論文などにも利用出来ます。*phrase 慣用句ではなく、単なる否定表現に過ぎませんが、特に日本人には、知っておくと迷わず文意を把握出来る利点は少なく無い筈です。*以下の例文の組み合わせが良く目にするものですが、別段これらに限定はされません。*<(not + 包括語)→部分否定>と覚えて下さい----------------------------------------not all全てが〜だと言う訳では無い*all の後ろには複数形名詞を取ります。Not all students enjoy studying mathematics.すべての学生が数学の勉強を楽しむわけではない。Not all problems have simple solutions.すべての問題に簡単な解決策があるわけではない。Not all flowers bloom in spring.すべての花が春に咲くわけではない。Not all mistakes are bad; some lead to great discoveries.すべての間違いが悪いわけではない。素晴らしい発見につながるものもある。Not all traditions are worth preserving.すべての伝統が保存する価値があるわけではない。Not all changes are improvements.すべての変化が改善につながるわけではない。I didn’t eat all of them.私はそれらを全部食べたわけではない。----------------------------------------not every個々のもの全てが〜だと言う訳では無い*every の後ろには単数形名詞を取ります。*全体として考えれば all を使い、個々の構成要素に目を向けるなら every を使いますが、これは話し手の意識の問題であり、いずれを使っても意味に大差はありません。Not every cloud has a silver lining.すべての雲に銀色の裏地があるわけではない。(すべての困難に必ずしも良い面があるわけではない。)Not every student enjoys studying mathematics.すべての学生が数学の勉強を楽しむわけではない。Not every problem has an easy solution.すべての問題に簡単な解決策があるわけではない。Not every book is worth reading.すべての本が読む価値があるわけではない。Not every friendship lasts forever.すべての友情が永遠に続くわけではない。Not every criticism is meant to be hurtful.すべての批判が傷つけることを意図しているわけではない。Not everybody was present.全員が出席していたわけではない。I don’t know every one of you.私はあなた方全員を知っているわけではない。Everything that glitters is not gold.光るものすべてが金と言う訳ではない。(見た目が良いものすべてに価値があるわけではない)*not が every の後に来ます。= Not everything that glitters is gold.All that glitters is not gold. の方が諺としての慣用表現です。cf. fool's gold 愚か者の金金色に輝く黄鉄鉱 Pyrite パイライトの別名。大方、鉄と硫黄が半々からなる鉱物です。 |
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not both両方とも〜だと言う訳では無いThe job requires either experience or a degree, but not both.その仕事は経験か学位のどちらかが必要ですが、両方は必要ありません。He can attend the meeting on Monday or Tuesday, but not both days.彼は月曜か火曜のどちらかの会議に出席できますが、両日は無理です。The discount applies to online or in-store purchases, but not both.割引はオンラインか店頭での購入のどちらかに適用されますが、両方には適用されません。The company will sponsor either the conference or the workshop, but not both events.会社は会議かワークショップのどちらかを後援しますが、両方のイベントは後援しません。You can use your vacation days in summer or winter, but not both seasons.休暇は夏か冬のどちらかに取れますが、両方の季節に取ることはできません。The scholarship covers tuition or living expenses, but not both.奨学金は授業料か生活費のどちらかをカバーしますが、両方はカバーしません。You may bring a laptop or a tablet to class, but not both devices.授業にはラップトップかタブレットのどちらかを持ち込めますが、両方のデバイスは持ち込めません。The gym membership includes access to the pool or the sauna, but not both facilities.ジムの会員権にはプールかサウナのどちらかの利用が含まれますが、両方の施設は利用できません----------------------------------------not always常に〜だと言う訳では無い*基本的に時間の概念が込められた表現です。You can't always get everything you want.欲しいものをいつも手に入れられるわけではない。Things do not always go as planned.物事は必ずしも計画通りに進むとは限らない。We do not always agree on everything.私たちはすべてのことで常に意見が一致するわけではない。The weather is not always predictable.天気はいつも予測可能ではない。Success does not always come easily.成功は常に簡単に得られるものではない。Appearances are not always deceiving.見た目が常に人を欺くとは限らない。Hard work does not always guarantee success.努力がいつも成功を保証するわけではない。A man of learning is not always a man of wisdom.学識のある人が毎度賢明な人とは限らない。(知識がある人が全員賢明なわけではない)----------------------------------------not necessarily必ずしも〜だと言う訳では無い*普遍的真理に言及する表現です。Success does not necessarily mean happiness.成功が必ずしも幸福を意味するわけではない。A large salary does not necessarily lead to job satisfaction.高給が必ずしも仕事の満足感につながるわけではない。The most popular choice is not necessarily the best one.最も人気のある選択が必ずしも最良の選択というわけではない。Not necessarily everyone will agree with you.必ずしも全員があなたに同意するわけではない。A higher price does not necessarily guarantee better quality.高い価格が必ずしもより良い品質を保証するわけではない。What you see is not necessarily what you get.見たものが必ずしも手に入るものとは限らない。Just because it's new does not necessarily mean it's improved.新しいからといって必ずしも改良されているわけではない。Good books are not necessarily expensive.良い本が必ずしも高価であるとは限らない。cf. necessarily not 全然〜ではない、全くあり得ない= definitely not*こちらは強い全否定の表現になります。ご注意下さい。 |
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