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倒置構文7 |
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2025年4月20日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 今回シリーズからは倒置構文について解説していきます。これまで各所で折に触れ解説してきましたが、それの集大成版となります。倒置とは疑問文を作る際にも見られることですが、要は、平叙文の中の特定語句、或いはそれに含まれていた様態語句(いわゆる助動詞)を文の先頭に持ってくる構文形式です。前回で触れた様に、強調の為に強調すべき語句を文頭に持って来る例が殆どであり−今回シリーズは前回とだいぶオーバーラップしますね−、それに伴い、それ以下の語句が固有の配列の変化を来します。定型的な法則に従いこれらの倒置現象が起きますので、否定の比較構文の解釈などと異なり、理解は至極ラクでしょうね。逆に出会った文章が、どうも通常の文の配列としては理解出来ない構造であれば、ははぁ〜ん、倒置が隠されていると判断し、落ち着いて<元の>語順に戻して解釈すればそれで足ります。倒置表現に関して一通り説明して行きますので、頭にインプットしておくと、確実な、大きな力となります。この先の予定としては、省略構文に触れて行く予定ですが、それで一通りの構文解説のシリーズを終える事になりますね。今回は倒置構文の第7回目となります。 英国ケンブリッジ英語辞典並びに Collins 英語辞典の用例を主に参考に解説を加えて行きます。https://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/inversion『チャート式 英文解釈』 鈴木進、数研出版、昭和51年、特殊構文第5章 倒置構文ここの基本的構成並びに(難解な)例文を幾つか参考にしていますが、塾長なりの視点から批判的検討を加え、また一部、より現代的な、或いはより正しい明確な表現となる様、書き換えたものも併記しています。 |
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倒置構文6*文の普通の語順 (Word Order) を変えることを倒置 (Inversion) と言います。*倒置は、@強調の為のもの、A慣用によるものとに大別出来ます。*形式を覚えて仕舞えばそれで済みます。*否定構文の様に意味の解釈に戸惑わされることも無く、或る意味形式論で終わりますので単純明快です。*覚えればそれで終わります。以下これらを順を追ってざっと解説して行きましょう。2 慣用による倒置2 (つづき)3. 仮定法の副詞節の if を省略する場合の倒置*仮定法の副詞節(条件節)のif を省略すると語順が変わります。*reduced conditionals 短縮条件法と呼称されるものです。*より formal な表現とされます。*蓋然性がやや低い仮定を表す if...should の構文、また事実とは100%異なる事を述べる、仮定法過去、仮定法過去完了の if 節が倒置されます。*単なる条件を表す if 節は倒置はされません。Should an emergency arise, I will fight in the cause of justice.→If an emergency (should) arise, I will fight in the cause of justice.仮に緊急事態が発生すれば、私は正義のために戦うつもりだ。*日本の学校英語では、if 節内の should を<万一>と決まり切って訳しますが、実際の should はやや蓋然性が低い程度のことを示すに留まり、即ち弱含みの表現ゆえ、奥ゆかしくて丁寧 polite で formal な物言いだとも見做されます。<もし〜の場合は>、<仮に〜の場合は>程度の訳が適当でしょう。*if の代わりに倒置して should を使います、と解説する native の youtube 動画もそこそこ見受けられますが間違いです。*if 節での should の利用については、『法助動詞 modal verbs と関連表現P』 https://www.kensvetblog.net/column/202302/20230210/ をご参照下さい。* 否定語 should...not, were ...not, had...not の使われる if 節を倒置する場合には、短縮形 shouldn't, weren't, hadn't とする事は出来ません。Were it not for your help, I should not succeed.あなたの援助がなければ私は成功しません。→ If it were not for your help,Had I been there, I would have helped you.もしそこにいたら君を助けたでしょうに。→ If I had been there,She sold off some of her holdings and rented out parts of her house, which helped her to finance for the time being. But the years that followed were difficult, and she might have lost the family home had it not been for her brother's kindness. (山梨大)彼女は持ち株の一部を売却し、家の一部を賃貸した。しかし、その後の数年間は困難が続き、彼女の兄の優しさがなかったら、彼女は実家を失っていたかもしれない。(山梨大)had it not been for →if it had not been for、もし(あの時)〜が無かったなら (ませた! native 小学生も時々使う類いの定型表現です)Were it not for the soap, even a sharp razor would not give me a perfect shave. Were it not for the brush, even the soap would be ineffective. Were it not for the razor, of what use the best brush in the world would be ?石鹸がなかったら、切れ味のいいカミソリでも完璧な髭剃りはできないだろう。ブラシがなかったら、石鹸でさえ効果がないだろう。もしカミソリがなかったら、世界一のブラシは何の役に立つだろう? (全て仮定法過去用法)4. 譲歩を表わす場合の倒置*as を用いる譲歩の副詞節では語順が変わります。*as の譲歩用法に関しては以下でチラと触れています:『様態表現4 接続詞としての as』 https://www.kensvetblog.net/column/202306/20230620/*かしこまった表現ですが、話し言葉でも利用されます。*この構文で文頭に名詞を出す時は、冠詞 a, an, the を付けません。*語感の点で優れるからかと思います。*この冠詞の省略は、同格の文言を挿入する場でも起こります。以下をご参照下さい: https://www.kensvetblog.net/column/202501/20250110/Young as he is, he is equal to the task.= Though he is young, he is equal to the task.彼は若いけれども、その仕事をすることができる。Friendless and orphaned as he was, he spent a happy part of his life in this village.彼は友もなく孤児であったけれど、この村で幸せな生活を送った。Woman as she is, she will make a good doctor.= Though she is a woman, she will make a good doctor.彼女は女だけれども、立派な医者になる素質がある。(she と呼ぶからには woman ゆえ、奇妙な表現とも言えますね。)be that as it mayそれがどうであろうと、それはともかくBuilding a new children's home will cost a lot of money but, be that as it may, there is an urgent need for the facility.新しい児童養護施設の建設には莫大な費用がかかるが、それはともかく、その施設は急務であるCome what may ( = Whatever may come), I will face it.何が来ようとも私はそれに立ち向かうつもりです。A heart-breaking sensation of loneliness kept with me, go where I might, and do what I might, and see what persons I might.胸が張り裂けそうになるような孤独感が、私の心を離さなかった。どこへ行こうと何をしようと誰に会おうとも。go where I might → wherever I might go.... |
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*以下、50年前の学参収載の例文Amazingly alike as they appear, the civilizations of ants and men are profoundly different at bottom. For ours is the result of intelligence, and that of ants is held together by instinct. So ants, marvellous as they are in their complicated acts of co-operation, are really obeyinginstinct blindly; they are slaves to it.見かけは驚くほど似ているが、アリと人間の文明は根底から大きく異なっている。私たちの文明は知性の結果であり、アリの文明は本能によって支えられているからだ。だからアリは、その複雑な協力行為には驚かされるが、実際には盲目的に本能に従っているのだ; 本能の奴隷なのだ。Amazingly alike as they appear → Although they appear mazingly alikemarvellous as they are in...→ although they are marvelous in... この譲歩句が挿入されています。*代名詞 they を、それが何を指すのかを示す主文主語の前に出して述べることは感心出来ませんが、ここでは the civilizations of ants and men が長いので、それの仮主語的な用法で前にthey を使ったとまだしも理解出来ます。*as を用いた譲歩の倒置では、主語は代名詞を用いる例しか見ません。本来的に主節の後ろに配置する従節を中身の代名詞をそのままに前に繰り出して利用している、とも解釈出来、そこでの代名詞は主節名詞に相当することになっている、との決まり、了解が native の間に出来て居るとも言えそうです。*意味が取りにくい副節(=従属節)表現があった場合、although や even を頭の中で補うと意味が明確になるならば譲歩節だと考えて正解です。*節に限らず、他の語句の前に even 〜ですら、を付けると意味が明瞭に浮かぶシーンは英語には多いです。*英語とは譲歩であることを明確に提示せずに物事を語る奇妙な言語である、と塾長もしばしば感じるところです。*彼らの頭の中では、<このシーンで使う時は譲歩のニュアンスで述べている>、とのセットが出来上がっているのでしょうね。*文脈から譲歩である事を察しろ、ですね。-------------------------------*as を用いる譲歩倒置表現の由来Oxford Dictionart, 2nd. ed.の as の項に以下の説明があります。B3b.In parenthetical clauses forming an extension of the subject or predicate, the antecedent (so, as) formerly present is now omitted, and therelative has acquired somewhat of a concessive force = Though, however.主語または述語の延長を形成する補足節では、以前は存在していた先行詞 (so, as) が現在は省略され、関係詞はいくぶん譲歩的な力を獲得している=Though, however.以下記載用例の一部c1300 in Wright Pop. Sc. 137 And _ut as gret as urthe and as lute as heo is, Ther nis bote, etc.1393 Langl. P. Pl. C. xiv. 185 So wis as ゙ow art holde..so wide as ゙ow regnest.1622 Heylin Cosmogr. iii. (1673) 114/1 As Pet. Ramas (as great a Clerk as he was)..hath most vainly told us.1641 Evelyn Mem. (1857) I. 37, I took leave of.. Antwerp, as late as it was, embarking for Brussels.1727 Swift Wond. Wonders Wks. 1755 II. ii. 52 The world, as censorious as it is, hath been so kind, etc.1742 Richardson Pamela III. 45 Bad as his Actions were..would there not have been, etc.?1835 Crabbe Par. Reg. i. 534 Fair as she is, I would my widow take.*上の例文を見ると、1727 年時点で、as censorious as it is と、先頭の as がまだ使われています。*今から300年程前までには so/as...as. の表現で譲歩の意味用法を持っていたのが、先頭の so や as が失われ、一見すると倒置を形成するものとして解釈される表現になったことが分かります。*従って、as を使った譲歩の倒置文と真の倒置文とは異なる事になります。*語呂の点からもカッコ良く耳に響きます。*Young as he is, he is equal to the task. を300年前風に書くとAs young as he is, he is equal to the task. になりますが、この記述自体で譲歩の意味となった訳です。*一部地域では現在も方言として生き残っている可能性はありますね。 |
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