idiom の話 |
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2019年5月20日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 前回 collocation について触れましたが、では idiom とは何が違うのでしょうか? collocation とは英語話者には自然だと感じられる言葉の組み合わせ、慣用的表現のことですが、idiom は、文法的にも自然な単語(殆どは易しい単語)の固定化された配列ではあるものの、言葉通りの意味とは違った概念を生じる表現のことを指します。日本語でも多用されます。例えば 「ワシのぉ、シノギもきつうなって来たさかい、足あろたろかおもてんねん」の<足を洗う>はカタギになることを意味しますが、誰でも知っている表現ですね。idiom とは日本語の成句、慣用句にほぼ相当します。 <易しい動作表現の動詞+前置詞の組み合わせ>例えば、 (to look over 上っツラを見る = examine briefly 手短にざっと調べる)が、或る程度の意味は類推出来るものの、意味的には軽い idiom と言って良いでしょう (文法的には正しくは句動詞 phrasal verb フレイザル・バーブと呼ぶ)。 |
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web 版のケンブリッジ辞典では、https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/collocationidiom@ a group of words in a fixed order that have a particular meaning that is different from the meanings of each word on its own:決まり切った順番で配列される言葉の一群で、個々の単語の文字通りの意味とは違った特別の意味を持つものA the style of expression in writing, speech, or music that is typical of a particular period, person, or group:書き言葉、口述、音楽表現のスタイルで、時代、人物或いは集団に特有なもの、 固有な、特有のスタイル*これは分かりにくいかもしれませんが、例えば黒人の音楽スタイル、平安時代の文学作品の文体などは idiom です。<固有のスタイル>と訳せば分かり易いですね。Though diverse in idioms, they all shared a profound involvement with the revival of a folk culture and its assimilation into art music.スタイルは多様化していたが、それらの音楽は根源では、フォーク文化のリバイバル並びにその音楽芸術への同化の面で関係があった。cf. to share a profound involvement with 〜 〜とは深い関係を共有する→ 通底する to be connected at a fundamental level with= Though diverse in idioms, they were all connected at a fundamental level with (or in terms of ) the revival of a folk culture and its assimilation into art music.表現型は多様だが、根っこには共通部分があるとの話ですね。スラスラ解釈出来ましたか? involve は多用される言葉ですが、日本語では今一ピンと来る訳語がありませんね。ここでは、巻き込み→関与→関係、と脳内変換しました) idiom に関してはweb 上に非英語話者向けの例示が沢山存在していますので適宜有効活用すると良いでしょう。基本的に易しい単語の組み合わせからの口語表現ですが、言葉通りに解釈すると意味不明のものが殆どでしょう。日本人には巻き舌でこの類いをぺらぺらまくし立てられても理解しにくいですが、入試には会話表現も出題されますので、基本的な表現は頭に入れておいて下さい。またformal な書き言葉ではどの様な表現に置き換え可能か随時考えてみて下さい。 因みに、学術論文などで、表記される文言は文字通りの意味で解釈されるべきであり、言葉とは異なる別の意味を持つ表現は歓迎されません。従って idiom そのものが使われる事は皆無に近いですが、それが表現したい意味内容にぴったりくる時には茶目っ気で ””で括って使う時もあります。 |
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cf. idiomatic1. Peculiar to or characteristic of the style or manner of a particular group or people特別な集団、人々の持つ特徴的なスタイルidiomatic expression/ phrase (作家の)固有の表現、文言2. typical of the natural way in which someone speaks or writes when they are using their own language自国語を話したり書いたりするのに自然で特有な遣り方、違和感の無いHe had the ability to write fluent and idiomatic English.彼には滑らかで違和感の無い英語を書く能力があった。(これは idiom を使った表現を書くと言う意味ではありません)Their books are translated into idiomatic English.彼の本は自然な英語に翻訳される。There are good pedagogic reasons for avoiding idiomatic idiosyncrasy of this kind.この種の特有な奇行を避ける為の、ぴったり来る教育上の理由が有ります。→なぜこの種の特有な奇行を止めさせねばならないのかをぴたりと説明する教育上の理由が有ります。cf. avoid = stop, controllIn terms of style it's like a short Bach piece containing lots of idiomatic motifs and pedal tone ideas.スタイルの点では、バッハの小篇の様であり、沢山の固有のモティーフとペダルトーンの着想が詰まっています。Does the text contain idiomatic phrases and if so, with what kind of dialect or register are these idioms associated?文章は固有の表現を含んでいますか、そしてもしそうなら、どの方言や使用域にそれらの表現は関係していますか?Performances are idiomatic, with well sprung rhythms and sensibly chosen tempi, and benefit from a generally cool and restrained approach.演奏は固有のスタイルであり、よく撥ねるようなリズムと繊細に選ばれたテンポを備えており、全体的に冷静且つ抑制の効いた表現法が良い効果を上げている。 |
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idiom はどの言語にもありますが、元々が多義的表現であると同時に、時代や場所により意味内容が異なって捉えられる場合もあります。会話レベルでの言語表現に潤いを添えるのは確かですが、短い、明確な意味表現で置き換える訓練を常に心がける (これには英英辞典を活用します) と英語力も一段と up すると思います。 |
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