英文読解 短期集中 個別指導

KVC Tokyo   練馬英語塾

                               












































































































































塾長のコラム 2019年10月20日  『英語は論理的か(その2)







英語は論理的か(その2)




2019年10月20日 (2021年4月13日 一部追記)

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 英語の欠陥としてよく知られた具体例ですが、下記論文にて詳細な構造的分析が行われています。この様な指摘は英語圏の者自体が以前から行っていることですが、日本語での説明はやはり分かり易く参考になります。英語は構造的に複数通りの解釈を許し、意味が多重性を持ち、曖昧性が出るとの指摘です。


 言語としての英語が本質的に内包する曖昧性に関しては、例えば以下の論文が参考になります:

https://ci.nii.ac.jp/naid/110000955843

英語・句レベルの曖昧性について : 英語曖昧表現の諸相II  中野清治  高岡短期大学産業情報学科

高 岡 短期 大学 紀 要   第4巻    平成5年3月

Bull Takaoka Natiomal College.Vol.4,March1993

https://toyama.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=7262&item_no=1&page_id=32&block_id=36 (ここからpdf 形式の全文をダウンロード出来ます)


抄録

英語の曖昧表現は言語事実について興味深い側面を明らかにしてくれるが、従来の文法書は曖昧性についてはほんの申し訳程度にしか触れていない。前稿 (「高岡短期大学紀要第3号」)では Lexical Ambiguity について概観してみたが、本稿では Structural Ambiguity を句レベルにおいて検討してみたい。言葉の曖昧性は、語そのものが多義であることに起因するものと、語が結合することによって構造が多様に働くために多義が生じるものとがある。後者のばあい、句のレベルで生じる曖昧性と文のレベルで現れる曖昧性とに区分できるが、本橋では句レベル、とくに名詞句、動詞句、形容詞句、<-ing句> がどのように曖昧性を生じるのかを観察する。小論の目的は上記の句形式の意味論的曖昧性の実態ないしは姿を明らかにすることであって、曖昧性を惹き起こす理由をさぐったり、曖昧さを解消する手順を検討するといったような、思弁的な文法理論や規則を組み立てることではない。


https://pracownik.kul.pl/files/11463/public/structural_ambiguity.pdf

Structural ambiguity in English word-formation BogdanSzymanek

ポーランドの ルーブリンカトリック大学の紀要?


 こちらも上記中野氏と似たような論文ですが、中野氏の文献の引用はありません。発表年不明ですが2010年以降のものであるのは確かです。


 文章の構造(構文と言う)を明らかにするために、しばしば木を逆さまにしたような図が描かれ、これを構造木syntax tree, @arse tree と呼称しますが、以下をご参照下さい。作製法についての動画も youtube で複数本を見ることが出来ます。


https://ja.wikipedia.org/wiki/構文木

https://en.wikipedia.org/wiki/Parse_tree








Ambiguity: Intro to Linguistics [Video 9]

2020/09/29 Fingtam Languages

Ambiguity is an important concept in Linguistics, that has to do with

words and phrases that can mean more than one thing.

https://youtu.be/u4t1LSNTQ2Q


英語の内包する曖昧性に関しては、extra-liguistic 非言語的な状況

で判断するしか無い事例が<明快に>語られます。





 言語としての英語の曖昧さ




 英語が内包する曖昧さについては以下の動画内容が分かりやすい例文を用いて説明していますのでご紹介しましょう。曖昧さの分類に関しては恣意的なものも含まれている様に感じますが、大筋では外れてはいないと思います。

Ambiguity: Intro to Linguistics [Video 9]

2020/09/29 Fingtam Languages

https://youtu.be/u4t1LSNTQ2Q


言語としての英語には以下に分類される曖昧さが存在します:



1. lexical ambiguity 語彙上の曖昧さ(単語の多義性)

 1つの単語に異なる複数の意味が存在する曖昧さです。


A man walk into a bar. これは以下の2つに解釈可能です。

A man collides with a pole.

 男は1本の棒とぶつかった。(bar を棒と解釈)

A man enters a pub.

 男はパブに入店した。(bar を酒場のカウンターと解釈)



2.figurative ambiguity 比喩上の曖昧さ


I am titanium. 私はチタンだ。これは以下の2つに解釈可能です。

I am made  out of metal.

 私の身体は金属で出来ている。(言葉通りに解釈)

I am resilient. 

 私はチタンみたいに頑丈で元気だ。(比喩として解釈)



3. morphological ambiguity 語彙形態上の曖昧さ


The door is unlockable. これは以下の2つに解釈可能です。

The doors is able to unlocked.  

 そのドアは解錠する事が可能だ。 (unlockable を unlock +able と解釈)

The door is unable to locked.  

 そのドアは施錠出来ない。  (unlockable を un + lockable と解釈)



4. speech act ambiguity 会話上の曖昧さ


Can you pass the maple syrup?  これは以下の2つに解釈可能です。

Are you able to pass the syrup?

あなたは(腕を折るなどしていなくて)シロップをこちらに回す能力が有りますか?

I request that you pass the syrup.

 シロップをこちらに回して呉れるようお願いします。


I'm sorry.  これは以下の2つに解釈可能です。

I apologize for what I did.

 私が行ったことを陳謝します。(陳謝)

I want to express my condolence.

 お悔やみを表したく思います。(同情)


*会話動作とは、statement 言明, order 命令, suggestion 提言,  question 質問, oath 誓い, invitation 招待,  request 要望, offer 提供, proclamation 宣言など様々な意思伝達、表明から成立しますが、その場の状況に於いて、正しい意味を把握する必要が生じます。



5. scope ambiguity 視野、視点の曖昧さ


Every hobbit fought a goblin. これは以下の2つに解釈可能です。

There is at least one goblin whom every hobbit fought.

 全てのホビット(人間に似た架空の生き物)が戦った鬼が少なくとも1匹居る。(every = 100% 、all と解釈)

For every individual hobbit, there is at least one goblinwhom  he or she fought.

 個々のホビットに対して、彼らが戦った鬼がそれぞれ少なくとも1匹居る。 (every = each  個々の、と解釈)



6. syntactic ambiguity 言語構造(構文)上の曖昧さ

 1つの文章が複数の言語構造(構文)で解釈される曖昧さです。

英文の構造即ち構文を明確にする為に、syntax tree (parse tree) 構文木が描かれますが、文章が曖昧さを含むと、構文木の枝の継ぎ方が複数パター取り得る事になります。以下の2つの分け方は明確な分類ではない様に塾長は感じますが、皆さんは如何でしょうか?


6a. structural ambiguity 構造上の曖昧さ (語句がどの語句に掛かるのか常識で判別)


I once shot an elephant in my pajamas. これは以下の2つに解釈可能です。

I was in pajamas when I shot it.

 象を撃ったとき私はパジャマを着ていた。

 (前置詞句 in my pajamas が副詞として動詞に掛かる)

The elephant I shot was in my pajamas.

 私が撃った象は私のパジャマを着ていた。

 (前置詞句 in my pajamas が形容詞として名詞に掛かる)


*この文章に対しては、我々は常識として象がパジャマを着ないことが分かっているので I was in pajamaswhen I shot it.を取ります。

*これは言語外情報 extra-linguistic information からの判断です。



6b. pragmatic ambiguity 語用上の曖昧さ(語句がどの語句に掛かるのか常識で判別不能)


Indiana Jones killed a man with a sword. これは以下の2つに解釈可能です。

He killed a man who had a sword.

 彼は剣を持って居る男を殺した。(with を帯同すると解釈、名詞に掛かる)

He used a sword to kill a man. 

 彼は男を殺すために剣を用いた。(with を手段として解釈、動詞に掛かる)


*この文章は常識等では全くいずれかを判断できず、最終的にはインディアナジョーンズが普段から剣を携えているのかどうなのか、即ちこちらも言語外情報 extra-linguistic information からの判断に拠りますが、一般常識などでは無く、個別の明確な情報に拠らねばなれません。




*英文解釈上頭を悩ますのは、書き手側が自分では意味が通るものとして書いている文章が、読み手側には上記の複合型曖昧さを持ち、文意の判断が困難である場合です。常識、慣用などでの助けが必要となり、文章単独で意味内容を特定、明示し得ない、英語の非論理性つまりは、論理記述言語としては完成度が低い点が、初学者が躓くポイントでもあるでしょう。

 実はこれは、十分に明確な論理的言語表現が為されず、更に句動詞を多用して行われる、周囲の状況判断からの情報を元に意味を把握して行かねばならないいわゆる英会話に対して、日本人が抱く違和感、苦手意識の根源が存在する由縁だろうと塾長は考えます。慣用的表現のパターンに慣れるしか無く、これの割り切りが出来る者が、本人のIQとは無関係に英会話が上達するのではと思います。いわゆる帰国子女などが開設しているyoutube の会話学習講座に於いて、当人達がこれを意識せず、場当たり的に会話表現の切り売り、小出しをしている例が多々見られますが、彼らがその様な指導に留まるならば、会話表現を幾ら覚えても−これら自体は役に立ちますが−言語としての英語の根源は理解出来ず、上っ面を滑るだけとなりますのでご注意下さい。


(この項、2021年4月13日追記)








 状況を掴んで解釈出来る、或いはその様な慣用的な意味合いに馴れている者は別として、初学者に英文和訳を難しいものにしている原因の1つは、英語が許容する(広義の)構造的な曖昧性の中に確実に存在するでしょう。曖昧だから初学者には意味概念が把握しにくい訳ですね。言葉がどこに掛かるのかがまず分かり難いのです。またそれに応じ、言葉の持つ意味が変わりもします(単語の多義性)。


 詰まり、文意が多重的に把握可能な場合、読み手側は前後の文の構成状況或いは言語外 extra-linguisticの状況からいずれの意味なのかを判断しなければなりません。コンピューターでの機械翻訳時に問題となる、語義の曖昧性解消 word-sense disambiguation を人間の脳内でフル回転で処理しなければならない訳です。当然条約や法律の条文に於いては、文意が多重性を持たぬように限定された意味を持つ用語 (往々にして仏語起源!) を採用しながら細心の注意をもって作成することになります。そうすれば、例えばフランス語では形容詞の性数とそれが修飾する名詞の性数が一致しますので、言葉と言葉との対応性、即ち明確性は英語よりは確実に上がります。








 少し前にも執筆者が非英語圏の者 (姓名からの判断) が書いた遺伝学の文献を読んだのですが、形容詞がどこに掛かり何を言い表そうとしているのか、また形容詞の持つ時間系列性が曖昧で、過程なのか、結果を表しているのかの判断に迷った事があります。これは自分の専門では無い遺伝学の文献ゆえに余計に分かり難かった面もあろうかと思います。遺伝学の専門家であれば、ああ、この形容詞はここに掛かると「慣用的」に即座に理解可能な筈ですが、学術論文の英語を一応は論理語として読まんとする者には理解不明となります。英語に native な者であれば、曖昧性を避けるきっちりした記述を心がけただろうと思います。内容が優れているとの理由で英語表現に多少の問題があってもレフェリーがパスさせたのでしょうね。

 以上述べてきましたが、英語の持つ非論理的側面を理解した上で、英文読解、英文翻訳、或いは英文作成を行うこと、スッキリした頭で作業に入れるのではないかと思います。

 塾長の出身高校は公立の進学校の部類であり、教員はほぼ茗渓閥(東京教育大が茗荷谷に位置していたため、それ由来の学閥)出身の優秀な者で固められていましたが、英語の授業で英語構造の曖昧性などについて特に教えを受けたことはありませんでした。高校3年の時点で英語の曖昧表現に関する参考書は個人的に入手していましたが、頭の中のもやもやが完全には解消されることなく受験に突入して行った経緯があります。真のエリート校ではこの様な事もきちんと教えられているのかもしれませんね。