英文長文読解 短期集中 個別指導 

KVC Tokyo  英語塾

                               















































































































































































































































































































塾長のコラム 2020年9月20日  独立不定詞と独立分詞構文の慣用表現@







独立不定詞と独立分詞構文の慣用表現@



2020年9月20日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 思考の流れをつなぐ表現についてですが、今回から6回に亘り、日本の大学入試問題でも、君たち知っていて当然だ、とばかりにしばしば出題される立不定詞  absolute  infinitive、並びに独立分詞構文 absolute (participial) construction の体裁を取る短い慣用表現を採り上げましょう。文法用語 absolute は、relatively  independent syntactically (統語的、文章構成的に主文に独立した関係にある)の意味であり、その様な訳で、日本語の「絶対」ではなく「独立」の語を当てるのは正しいでしょう。因みにここの  relative は、文法用語であり、relating or referring to an antecedent term (先行する用語に関係する)、の意味で、例えば relative  pronoun. 関係代名詞の用語もありますね。<相対的に>と訳すと absolute の語と矛盾してしまいますのでご注意を。

 to 不定詞は皆さん良くご存じの様に、名詞用法(それ自体が名詞となる)、形容詞用法(名詞を修飾する)、それと副詞用法(動詞、形容詞、副詞、文全体を修飾する)の3つが有りますが、独立不定詞とは、慣用的な定型的表現であって、parenthetically (挿入句的) な方法で使われます。詰まり大まかには主節の文章全体に掛かる一種の副詞用法と考えたら良いのではと思います。独立不定詞を「元の状態に expand 拡張」して同じ意味内容の文に仕立てることも出来ますが、逆に言えばその様な長ったらしい定型的な概念を一言でサッと済ますための簡潔明快な表現と言えますね。

 不思議なことに、立不定詞  absolute infinitive で 英語圏にて web に検索を掛けても該当する記述が全く見付かりません。更に、colloquial expression using to-infinitive や absolute phrases with to-infinitive などで google さんのお世話になっても何らピックアップもされません。どうやら、英語圏では独立不定詞なる用語で括った概念はほとんど存在しない模様であり、日本ならではの文法概念である可能性があります。この辺は、実は英語の5文型の概念がもともと英語圏には存在せずに日本人が唱えた可能性があることにも類似します(塾長のコラム 2019年7月5日  『文型 と 動詞型』 を参照下さい)。まぁ、英語圏では只の慣用表現の1つだ、程度の扱いでしょうか。



 これは独立分詞構文 an absolute (participial) construction or absolute phrases に関しても然りであり、単に an absolute  construction (主文に対して文章構成上独立する、換言すれば主節とは主語が異なる節 clause)の1つとして簡略に説明されるのみです。分詞構文は自由に作成・表現出来ますが、不定詞の用法と同様に主節との意味上の主語が一致していることが必要だと強調されます。英語圏の者でもこれに外れたマズい英文を作成してしまう者が居る訳です。その様な中で主語が一致しない分詞構文即ち独立分詞構文は、短い慣用的或いは簡単な定型的な表現(意味がすぐに分かる)が許容されて生き残り、勝手に作って利用する様な事は限定されて来ている状況かもしれませんね。

 まぁ、不定詞にせよ分詞にせよ動詞の用法ゆえ動作の主体たる主語が何であるかの鋭い意識が英語には常に必要とされるのですが、これが慣用的表現化し、この、意味上の主語の呪縛が弱まり、副詞句としての色彩を強めた表現であると考えるのも面白いでしょう。

 分詞構文また独立分詞構文も、適当な接続詞を選択し用い、関係代名詞などを用いて通常の構成の文章に<復元>が可能です。逆に言えば、適切な接続詞などが省かれている分だけ文意が曖昧性、多義性を抱えることになります。この様なことから決まり切った、明らかに意味の取れる表現に固定化が進むのでしょう。


 例えば、wikipedia の独立分詞構文の用例 

https://en.wikipedia.org/wiki/Absolute_construction では


Weather permitting, we will have a barbecue tomorrow.

 天気が良ければ明日はバーベキューを遣ろう。


→ If the weather permits us to have a barbecue tomorrow,we will do it.


All things considered, it's  not a bad idea.

 全部を考えてみるとそれは悪い考えじゃあない。


→ When (If) all things are  considered, it's not a bad idea.


This being the case, let  us go.

 こんな訳だから出掛けよう。


→ Since this is the case, let  us   go.


The referee having finally  arrived, the game began.

 レフェリーがやっと到着し試合が始まった。


→ After the referee had finally arrived, the game began.

→ Finally the referee arrived, and then the game began.


 これらは皆決まり切った用法ですので迷うことなく適当な接続詞を用いて即座に脳内変換されます。



 英語にまつわるコラムを執筆する為に、森一郎先生の『試験に出る』シリーズ以降の定評ある受験参考書を片っ端から通読しましたが、我々日本人には良く理解出来る文法概念が本国では成立していない、曖昧なままである、或いは視点が異なっているケースがあることに改めて気づかされました。語順からして全く異なる言語圏から英語を見ると、本国人が見えていない法則性が逆に明確に把握出来ると言う事かもしれませんね。日本人が英語を理解する為の、日本語圏にての「英文法」が成立していてもそれはそれで合理性があることだと塾長は考えています。

 勿論、ガラパゴスにならずに英語圏に於ける native speaker が構成した英文法の概念を知っておくことは視野を広げる上で大切ですし刺激になります。これまでのコラムで触れて来ましたが、西欧語は西欧語の中で理解するのが一番の原則であり、その中で英語がどの様な位置づけにあって派生してきたのかを見ることがまさしく英語の理解に直結します。例えばゲルマン祖語からどのようにして変遷して来たかを探る過程で倒置表現の成立なども深く理解出来るようになります(これに関しては塾長のコラム2019年11月5日 『英語はゲルマン語か@』の、ゲルマン語の特徴の項をご参照下さい)。日本人が他の西欧語への理解に乏しいままに日本語 vs. 英語の捉え方で英文法を理解しようとすると独りよがりの奇怪な解釈に陥る危険性も確かにあり得るでしょうね。


本コラム作成の参考サイト:


https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/

https://en.wikipedia.org/wiki/Absolute_construction








Advanced English Grammar: Participles

2017/06/13 English Lessons with Adam - Learn English [engVid]

https://youtu.be/eWvkSp16VFY


分詞構文の作り方が丁寧に指導されます。注意すべきは主文の主語と分詞構文

の主語を一致させることです。主語が別の場合(独立分詞構文と言う)はそれを

分詞構文側の先頭に添えます。また多義性を持ちますので意味を明確にしたい

場合は適当な接続詞を添えます。いずれにしても硬い文語的表現となりますので、

会話などでは本コラムにて扱う類いの極く短い慣用表現に限定されます。






慣用用法としての独立不定詞と独立分詞構文


 慣用用法として成立、ほぼ固定化されている独立不定詞と独立分詞構文は、少数を除いては、全て自分が発言しようとする姿勢、発言する内容の全体像の方向性を、事前に或いは途中で、相手に伝達する定型的表現となります。例えばいきなり結論を述べると相手はビックリしますので、<奇妙なことに>、<最後に結論と致しましては>などのフレーズをクッション役として挟み込む訳です。この様な表現を複数知っておくと、日本語でスピーチする時にも自分自身の緊張感をほぐして話の主題に自己の意識を向けられる効果もあるでしょう。その意味でも無駄ではありません。

 既に定まったものゆえ好き勝手に作る事は出来ません。数が少ないのでそのまま頭に入れれば終わります。決まり切った言葉ですので多用し過ぎるとすると嫌味にも聞こえます。日本語の文章でも同じことですが、文章は最後は中身での勝負となります。<即ち、まず最初に、換言すれば、面白いことに、結論と致しましては>などの語句だけを並べても普段文章に接している者には中身が空虚だとすぐに見抜かれてしまいます。まぁしばしば政治家の挨拶や高級官僚の国会での答弁などに見られることですが、言語明晰意味不明と言う次第です。因みに、考えを明瞭に表現すること、言葉を1つ1つ聴き取り易く話すことを articulate (関節で繋ぐ)を動詞、形容詞として使い、

She always  talks a lot, but  she is not so articulate.


彼女は毎度べらべら喋るけど話の筋があまり明晰じゃあない。


などと表現します。articulate は、骨と骨とを関節させるが原義ですので、単語と単語を適切に繋いで意味がスッキリ通る文章を仕上げるとの意味です。文章とは恐ろしいもので、書き手のIQ、教養、創造性などが丸分かりとなりますが、皆さんも優れた文学作品、評論などを批判的に読み、well articulate な文章をモノすべく研鑽を積んでください。








 前置きが長くなり、またちょっと分かり難い内容だろうと思いますが、文法的な概念、理解はさておきまして、本コラムシリーズでは、思考の流れを滑らかに繋ぐ表現として、幾つかの<独立不定詞>並びに<独立分詞構文>を利用した慣用的表現を次回から11回のコラムで見ていきます。一通り頭に叩き込んで下さい。損はしません。