否定構文5 |
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2024年12月1日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 前回シリーズの前半にて、否定表現を交えた比較構文について説明を加えました。これは特に我々日本人には直感的に意味が掴めないものとなります。西欧語同士は互いに類似した言い回しがあるため、理解に困難は無い筈ですが、日本語にはその様な発想法が無く、何度説明をされ、一端は分かったものの、暫くするとまた混乱してしまう方が多いのではと思います。今回からは、それの一種の延長戦上にある表現として、否定構文の内でも難解な二重否定構文を採りあげて行きます。まぁ、否定語+than を、than を否定語に変えて、否定語+否定語にしたものと似ています。 殆どが定型的な慣用表現でもあり、また日本語でも、〜無い訳では無い、吝(やぶさか)かでは無い、憎からず思う、などの二重否定表現があり、否定+than の場合よりは、幾らか理解すること自体は容易ではと思います。但し、和訳するに際し好適な訳語を当てるには、文脈を把握することが必要となりますのでなかなか大変です。 その場でまごつかないように、斯かる言い回しには斯かる訳語(の候補)を当てる、と、その定型的な複数候補−要は書き換え公式と呼称しても良いもの−を含めて前もって知っておくことは、比較表現などと同様、非常に大きな強みになります。難解な比較表限と否定表現をきっちり押さえておくと、英語の読解力が確実に数段上に上がる訳です。皆さんには塾長のコラムを通じて是非ともそれらを頭に input して戴ければと思います。 当然乍らストレートに物言いすべきところを、ひねて婉曲に告げる表現ですので、学術論文などには皆無の表現ですね。特に難解な<凝り固まった>表現は古典的な文学作品にも頻出し、一頃の大学入試では、この様な持って回った様な英文を和訳せよとの出題が見られ、受験生泣かせでした。この種の出題は、古典的文芸教材を元に古い教育を受けた文系上がりの英語教官が半ば趣味的に出題したものと私は考えて居ます。これが入試に対応せざるを得ない高校での英語教育を歪め、何年英語を勉強 study しても英語が身に付く learn することが出来ない元凶の一つであったろうと考えます。なんとなれば、難解なハズルの様な英文を<解読>させることと、意思疎通の為の正しく明確な英語表現力−自己主張力−を育てる事とは次元が大きく異なるからです。難解な英文を提示する事で自らの地位の保全を図るようなところが、旧来の英語指導者の多く−優れた指導者は勿論存在しましたが−に見られた様には感じています。幸いな事に斯かる古い世代の遣り方は駆逐され、事態は改善されつつあり、近年の入試にはその様な<パズル問題>はだいぶ少なくなって来ていると感じますね。 これらの表現について過去に断片的に述べたものも纏め一通り触れて行きましょう。このシリーズの第5回目となります。更にこの先の予定としては、各種英語構文の内、難解なもの−同格構文、挿入構文、共通構文、強調構文、倒置構文、省略構文、−を中心に順次触れて行く積もりです。 英国ケンブリッジ英語辞典並びに Collins 英語辞典の用例を主に参考に解説を加えて行きます。 https://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/double-negatives-and-usagehttps://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/negation_2https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/neverhttps://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/can-t-even-begin『チャート式 英文解釈』 鈴木進、数研出版、昭和51年、第7章 否定構文ここの基本的構成並びに(難解な)例文を幾つか参考にしていますが、塾長なりの視点から批判的検討を加え、また一部、より現代的な、或いはより正しい明確な表現となる様、書き換えたものも併記しています。 |
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cannot...too 構文*cannot 〜too...' は、「余り...しても〜しすぎることはない」 「幾らしてもし足りないぐらいだ」と言う強調表現になります。*但し、口語では、あまり〜には〜できない、の意味になる場合があります。*意味にも曖昧性を抱えた強調表現、即ち感情を交えた表現ですので、口語や文芸にて利用は許されるも、当然乍ら、客観的公平性に留意する自然科学系の学術論文などでは全く使用できません。*と言いますか、使用する場がそもそも出て来ません。*<幾ら遣っても〜し足りない>の表現が学術論文ではあり得ない事がお分かり戴けるかと思います。*<ここに至る迄の本論文の方法を採用した結果、現在の課題の大半は解決されたものと考える。しかし、今後の課題としては・・・>なら論文にはなり得ますが。*大学入試の設問が、文系出身の教官 only で作成されるためと思われますが、著しく奇妙奇天烈な古典評論、文学からの出題に一頃は偏っていました。*二重否定構文や cannot... too などの出題は、受験生側も、あっ、また出しやがったぜ、と心得え、サッと書き換えて先に進むのが最善です。*この形式は次の様な変形があります。*<不可能性 cannot/ impossible>+<し過ぎだ too/ over/enough/ sufficient>の組み合わせになります。*人称(I は除く)を主語にすると、呉々も〜した方が良い、の助言、忠言の意味になります。*you にすると、お前はもっと〜しろ、の助言になります。*即ち、この様な場合は、命令文や should すべきだ、を使った文にも書き換え可能です。-----------------------------------------------cannot toocan never enoughcan hardly + sufficientcan scarcely exaggeratebe impossible overestimateetc. overpraiseetc.-----------------------------------------------I can't praise you enough.君のことはとても誉めきれないぐらいだ。I can never thank you enough.感謝の言葉もありません。I cannot recomend this book too highly.この本は幾ら強く推薦してもし切れないぐらいだ。(強意)この本はあまり強くは推薦できない。(弱意、口語)(I 以外の)人称主語を用いた助言、忠言表現You can't be too careful when you choose your friend.友人を選ぶ際にはくれぐれも注意した方がいい。= Be careful when you choose your friend.= You should be careful when you choose your friend.We cannot be too careful in crossing the street.その通りを渡る時には呉々も注意する必要がある。= We should fully be careful in crossing the street.→Crossing the street requires full care. (これが普通の表現です)You cannot be too good to your parents.親孝行は幾らでもした方が良いよ。You can't overestimate his courage.彼の勇気は君は評価し切れてない。→彼をもっと評価したまえ。You cannot know too much about the language you speak everyday.=You should know much about the language you speak everyday.我々が日常話す言葉についてはいくら知識があってもいい。We cannot exaggerate the value of good health.健康の価値をいくらいっても言いすぎることはない。= It is impossible for us to exaggerate the value of good health.無生物主語表現The importance of reading can hardly be overestimated.読書が大切なことはいくら評価してもし足りないほどである。→I can't begin to tell you how much I appreciate the importance of reading.cf. can't (even) begin to do= it's very difficult for me to do 難しくて〜出来ないAs a wealthy businessman, he couldn't even begin to imagine real poverty.裕福な実業家だったので、彼は真の貧困を想像すら出来なかった。Good manners cannot be too much valued.立派な行儀作法はいくら尊重してもしすぎることはない。= No amount of respect for fine manners is too much.The chief end of science is understanding, and there can never be too much understanding, though it may be abused.科学の最大の目的は理解することであり、乱用されることはあっても、理解しすぎることはない。= The primary purpose of science is to understand, and while it can be abused, it cannot be over-understood.The silk-worm is an animal of such acute and delicate sensations, that too much care cannot be taken to keep its habitation clean, and to refresh it from time to time with pure air.I have seen them languish and die in scores, in consequence of an accidental bad smell.蚕は非常に鋭敏で繊細な感覚を持つ動物であるため、その住処を清潔に保ち、時折清浄な空気でリフレッシュさせることに気を配りすぎることはない。私は、蚕が偶発的な悪臭のために衰弱し、何匹も死んでいくのを見たことがある。= Silkworms are very sensitive and delicate sensory animals, so they are not overly concerned with keeping their habitat clean and refreshed with clean air from time to time. I have seen several silkworms weaken and die from accidental foul odors.The history of metals has been declared to be the history of civilization. Indeed, it would be almost impossible to overestimate their importanceto man. Man could do very little with stone implements compared with what he could do with mental implements. (青山学院大)金属の歴史は文明の歴史であると言われてきた。実際、人間にとっての金属の重要性を過大評価することはほとんど不可能だろう。 人間は石器では、精神的な道具を使ってできることに比べれば、ほとんど何もできなかった(からだ)。 (青山学院大)→It has been said that the history of metals is the history of civilization. Indeed, it would be almost impossible to overestimate the importance of metals to man. For man could do little with stone tools compared to what he could do with spiritual tools.-----------------------------------------------cf.There is no problem too big God cannot solve it.大きすぎて神が解決出来ない問題など何も無い。*似た表現ですが、単なる二重否定になります。= There is no problem (too big) God cannot solve (it).*too big は後ろから名詞 problem を修飾します。 |
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その他の否定表現1 けして〜ない(その1)*ここからは一旦構文を外れ、個々の語法の解説に入ります。*単純に言えば never = not ever を利用すれば良いのですが、never には、事象が<常時或いは全ての状況で>全然そうではない、との意味合いを持ちます。*これに対して単発的な事象を強く否定する場合は、not ...al allやその仲間を利用します。*この様な表現を解説していきましょう。nevernot at any time, or not on any occasionいつ何時も、どんな状況でも〜ではない、けして〜ない*ピンポイントの時での action の否定では無く、時間幅の中で一度も無い、ことを表します。*従って、常態的行為・事象、過去の経験、習慣、状態、真理を否定表現を用いて表すのに用いられます。*大方、be 動詞や状態を表す動詞との組み合わせで用いられます。*この点に於いて、日本語の<けして〜ない>のニュアンスと一致していますので、日本人には使用は躊躇無く行えるでしょう。*日本語の言葉通りに never を用いて作文出来る訳です。I've never heard anything so ridiculous.こんな馬鹿げた話は一度も聞いたことがない。(過去から現在に至る間の経験の否定)She never had acting lessons彼女は演技のレッスンを受けたことがなかった。(過去の経験の否定)He's never been able to admit to his mistakes.彼は自分の過ちを認めることができないの。(継続の否定、ずっと出来ないままだ)I'm never going to guess the answer if you don't give mea clue.あなたがヒントをくれなければ、私は答えを当てることはできないわ。(未来の常態の否定)After what she did to me, I'll never trust her again.あんなことをされたら、もう二度と信用できないわ。(未来の常態の否定)Let us never forget those who gave their lives for theircountry.国のために命を捧げた人々を決して忘れてはならない。(未来の常態の否定)He threatened to shoot, but I never thought (= did notthink) he would.彼は撃つと脅したが、私は彼が撃つとは思っていなかった。(過去の常態の否定)I never realized you knew my brother.あなたが私の兄を知っていたとは。(過去の常態の否定)She complained that her husband never paid her any compliments any more.彼女は、夫が自分をほめてくれなくなったと不満を漏らした。(過去の常態の否定)It's never too late to start eating a healthy diet.健康的な食生活を始めるのに遅すぎるということはない。(真理)(it は to start の仮主語であり、too...to 構文ではない)British weather can never be relied on - it's always changing.イギリスの天気は当てにならない。(真理)UK informal"He's never 61! (= it's difficult to believe he's 61!) Helooks so young."「彼は決して61歳ではない!(彼が61歳だなんて信じられない。Such a definition can never be of ultimate importance inany study except lexicography.このような定義は、辞書学以外のどんな研究においても究極の重要性を持つことはない。She says she has no interest in seeing him and, furthermore, that she will never deny that she is not grateful.彼女は彼に会うことに興味はなく、さらに、感謝の気持ちがないことは決して否定しないと言う。You know one thing about a dog: he will never leave the master who has fed him for a stranger.犬について知っていることがひとつある。彼は決して、見知らぬ自身のために餌を与えてくれた主人のもとを離れない。Other women have what she, a poor working-girl, can never possess.貧しいOLである彼女が決して手に入れることのできないものを、他の女性は持っているのだ。Never mind the fact that cosmological theorizing in physics refers to events in the past that cannot be observed by us or our descendants.物理学の宇宙論的理論が、私たちや私たちの子孫には観測できない過去の出来事に言及していることなど気にしない。as never beforeidiomin a way that has never been possible before:これまでは不可能だった方法で、嘗て無い遣り方でSatellite technology offers the opportunity, as never before, for continuous television coverage of major international events.衛星技術は、かつてない方法で、国際的な大イベントを継続的にテレビ中継する機会を提供している。.--------------------------------------------------------never と not … ever の違い*neverの代わりに not ... everを使うこともできますが、neverの方が一般的です。She has never been a friend of ours. (or, less common, She hasn’t ever been a friend of ours.)彼女は私たちの友人になったことがない。(あるいは、あまり一般的ではないが、She hasn't ever been a friend of ours.)Never forget where you came from, your family, your childhood friends. (or, less common, Don’t ever forget where you came from …)あなたがどこから来たのか、あなたの家族、幼なじみを決して忘れないでください。(または、あまり一般的ではないがが、Don't ever forget where you came from ...)注意:文頭では not ... ever は使いません。必ず never を用います。◯ Never had they seen so many strangers in their village all at the same time.これほど多くの見知らぬ人が同時に村にいるのを過去には見たことがない。 (経験の否定)×Not ever had they seen so many strangers … |
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